命のネットワーク
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緊急の訴え 能登半島地震
能登半島地震は広域かつ深刻な打撃
それでもなお原発回帰、再稼働の狂気を続けるのか!
爆弾がおちたような揺れが襲ってきました。震源は能登半島沖でM7.6、震度は6強です。
死者は236人。輪島市101人、珠洲市99人、能登町8人、穴水町20人、七尾市5人、志賀町2人、羽咋市1人です⇒1月26日現在。8日当時からは大きく減りましたが安否不明の人がなお19人います。死者は今後さらに増えると心配されます。
◆海岸線の隆起は東西85㌔にも
震源となった能登半島の海岸線の隆起は半島東端の珠洲市狼煙から西側の志賀町西海地区北部に至る90㌔に及びます。それだけ今回の地震は長大で広域でした。
津波は県内だけでなく、冨山県の各港、新潟県上越市にも押し寄せました。石川、富山、新潟3県の港湾の被害は71港に及び、乗り上げたり転覆した漁船は169隻以上になります。海岸線の隆起により、石川県内15港の復旧は極めて困難と言わざるを得ません。
◆予想通り能登の孤立!
死者や被害が拡大するのは、以前から心配されていた通り「能登の孤立」です。自動車専用道の里山海道や国道249など7つの主要幹線が、がけ崩れや道路陥没のため各所で寸断されて、多くの地区が孤立地区となり、2週間たってもなかなか連絡がつかず、支援物資も届けられないという悲惨な状態がつづきました。
◆被害は富山、新潟、福井県にも
道路陥没、家屋の倒壊、断水などの被害は内灘、かほく、金沢、能美に広がっています。 富山県の被害も大きく、なかでも氷見市は家屋の倒壊に加え断水がつづき、他の市町でも多数の負傷者が出ました。特に断水は輪島火災の消火を妨げ、感染症医療にも支障をきたしました。住民の日常生活に困難をもたらし他地区への第2次避難に促進する要因になりました。
私たちはかつて98年5月に自家用車300台、参加者600人で富山県氷見市への自主避難訓練を実施しました。画期的なとりくみでしたが、それすら今思えば原発震災を直視していませんでした。いま行政が実施している避難訓練は全く現実離れであり、再稼働への条件を準備するものでしかありません。輪島、珠洲は自治体の命運が問われ、能登町や穴水町、志賀町も大変な事態です。その上、原発のリスクも引き受けよ!というのでしょうか。
◆相次ぐ地震の教訓を無視。再稼働の狂気はこれまで!
1995年阪神淡路大震災以来の地震列島・日本の現実に反する再稼働の狂気はここで打ち止めとすべきです。志賀原発では2007年3月の能登半島沖地震で、震源となった輪島市門前沖43㌔の海底断層を3つに切り離して過小評価していました。今回は85㌔の海岸が隆起しましたが、実際には志賀町から佐渡ヶ島西方までの150㌔全体が動いたとも見られています。
また07年7月の中越沖地震で柏崎刈羽原発は変圧器火災により冷温停止に苦労し、あわや原発震災!という事態になりました。ところが今回の地震で、志賀原発2号機は外部電源を受けるために必要な変圧器の故障=大量の油漏れを起こし、復旧には最低半年はかかるといいます。各地のモニタリング機能も多数損傷し、津波の襲来も含めて発表は大変混乱しました。これが志賀原発の実態です。原発前面の海底断層や1㌔先の福浦断層にまで及ばなかったのは最後の機会です。
繰り返します。「もうやめてくれ。原発依存社会と再稼働の狂気を!」
<命のネット代表 タナカ哲也記>
<左:北陸中日新聞より 2024年1月23日>
<NO.74 2024年1月5日発行>
とめよう!原発依存社会への暴走
大阪の全国集会に1600名が結集!
政府や電力会社などの原発推進勢力は、ウクライナ戦争によるエネルギーひっ迫や炭酸ガス削減を口実にして原発の再稼働に狂奔しています。
昨年5月末の通常国会で、5つの原発推進関連法を束ねて成立させて60年超え運転を可能にしただけでなく、運転期間の判断を経産省にゆだね、原子力基本法に「原発推進を国の責務とする」の一項を加えました。また8月24日、福島原発事故による放射能汚染水の海洋放出を開始しました。この汚染水放出は第一原発の廃炉完了まで30年以上、世界の海を汚し続け被爆国日本を核の加害国にしてしまいます。
◆老朽原発再稼働のため上関に中間貯蔵施設の設置へ!
岸田政権に追随する関電は、運転開始後50年近くになる、危険極まりない老朽原発・高浜1,2号機、美浜3号機を昨年9月には再稼働させ、増え続ける使用済み核燃料に対処するため、中国電力が建設の中断を余儀なくされている上関原発の代わりに中間貯蔵施設を設置するという「奇策」を打ち出してきました。中国電力はまるで関電の子会社です。
一方、原発を規制するはずの原子力規制委員会も沸騰水型のBWR原発=東海、柏崎刈羽、女川、志賀原発を何とか動かそうと東電、東北電への規制を事実上解除し首都圏に大被害をもたらす東海原発の再稼働が迫っています。北電に対しては志賀原発直下の断層は活断層だという自らの長年の主張を3月には転換させました。規制委ではなく寄生委です。
◆大島賢一教授、木原壮林さんらが訴え!
これら原発依存社会への暴走に待ったをかけ、原発全廃の大きなうねりを作り出そうと全国集会が大阪市内北区のうつぼ公園で開かれ、全国7つの現地代表と関西の仲間を中心にして1600名が参集しました<命のネットはタナカ、藤岡が参加>。
反原発福井県民会議の中嶌哲演さん(小浜・明通寺住職)の主催者あいさつの後、龍谷大・大島賢一教授が「原発は電気代の面でも、福島事故後30兆円を超える資金が投じられ、見えない形で大きな国民負担になっています。岸田政権がすすめる原発回帰政策を許せば、日本経済と社会は取り返しのつかない状況に追い込まれるでしょう。原発回帰を許してはならない!」と訴えました。
参加した各現地代表(青森/核燃料廃棄物搬入阻止阻止実行委、新潟/さよなら柏崎刈羽原発プロジェクト、首都圏/止めよう!東海第二原発連絡会、福井/オール福井反原発連絡会、愛知・岐阜/老朽原発40年廃炉訴訟市民の会、四国/伊方からげんぱつをなくす会、上関/原発いらん!山口ネット)の決意表明の後、1600名全員がポテッカーを一斉に掲げました。<1面トップ写真>
集会宣言は老朽原発を動かすな!実行委の木原壮林さんが行い、太鼓と笛で気合十分のデモで中心街の御堂筋を行進しました。
◆4日には全国相談会
翌4日は再稼働阻止ネットの全国相談会が国労会館で行われ、青森、福島、茨城、東京、滋賀、関西(若狭の原発を考える会)、伊方、島根、上関、石川・タナカが参加。女川2号、島根2号、東海第二の再稼働を止めるたたかいに全力を挙げることを決めました。<タナカ記>
被告側の無回答に、文書提出命令申立書を提出
富山訴訟第16回口頭弁論報告
さる12月6日に富山地裁で、志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)第16回口頭弁論が行われました。年末の忙しい中にもかかわらず、今回も富山・石川・福井県内から原告や支援者の皆さんが富山地裁に集まりました。今回も全員が傍聴席に入ることができました。何かとお忙しい中、駆け付けていただいた皆様や、高槻市の水戸喜世子さんをはじめメッセージなどお心を寄せて下さった皆様に、心から感謝申し上げます。
≪原告側が被告側の不誠実な対応を厳しく批判し、準備書面等を提出≫
今回の法廷では、まず原告側弁護団が、被告側に何度質問してもはぐらかしや無回答等の不誠実な態度を続けていることを厳しく批判する書面や、文書提出命令申立書を提出しました。また、法廷では原告側弁護団が裁判所に対して、被告側に厳しい姿勢で臨むよう直接求めるなど、積極的に主張を展開しました。
①第33準備書面を提出・要約陳述
原告側が第20~31準備書面で被告側に質問したことにすべて答えたとする被告準備書面(11)が前回に提出されたが、その内容は原告の主張や質問に回答せず、論点をすり替えたり、原告らの主張のごく一部にしか反論しないなど、不誠実な態度であることを、具体的に批判しました。特に被告側に質問しているのは、使用済み核燃料プールの健全性やテロ対策その他志賀原発の安全管理が可能か否かについて、取締役会で検討した事実があるかどうかです。
②文書提出命令申立書を提出
被告側が原告側や裁判所の質問に答えようとしないため、原告側は「文書提出命令申立書」を提出しました。2011年の福島原発事故以降、取締役会でどのような検討をしたうえで志賀原発の再稼働方針を決定したのかを明らかにするため、取締役会の議事録の提出を求めるものです。
≪「被告側はアンフェアだ」と裁判所に釈明権行使を求める≫
原告側弁護団は、被告側が原告側の質問事項だけでなく裁判所からの核燃料貯蔵プールに関する質問事項にさえまともに回答しないことを「被告はアンフェアである」と厳しく追及しました。
被告側は「会社法に規定する範囲で答えた」と開き直りましたが、原告弁護団はさらに厳しく追及しました。被告側は「まだ事故も起きていない。見解の相違だ」と逃げようとしましたが、原告弁護団が次々と発言し、被告側をするどく追及しました。
原告弁護団は裁判所に対して、裁判所自らが釈明権を行使して、被告に回答させるべきと指摘し、裁判長も「原告の釈明権の主張は承知している」と答えました。<和田廣治 記>
●次回、第17回口頭弁論は、3月4日(月)15:00開廷です。
◆赤住バス停横の看板を再建
橋さん宅の敷地をお借りして赤住バス停横に設置されている脱原発看板が、昨夏の大風で枠組みと土台ごと壊れてしまいました。猫の目交差点同様、風のきつい場所なので土台はコンクリート、支えの枠は写真のとおり鉄製にして再建しました。お金はかかりましたが、皆さんの会費のお陰です。
<編集後記>
●ガザの虐殺は欧米の二重原理を示す!
10月7日、ハマスの奇襲攻撃成功でイスラエルが1200人の死者を出したことにより始まったガザ攻撃は、すでに2か月。ガザ地区住民は住宅、水、食料、医療など生活基盤を徹底的に破壊され、死者は1万7千人超、負傷者は4万3千人以上に達しています。さすがに国連のグレーテス事務総長は国連憲章99条に基づき、安全保障理事会に対し人道的な停戦を求めるよう要請しました。
事態はかつてナチスが占領地で行った悪名高い『10倍返し』すら上回っています。「子どもたちの墓場と化した」と言われ、日本ユニセフ協会の報告では子どもの死者数は5千4百人超。明らかにジェノサイド条約にも反して「民族浄化」を進めているとしか思えません。
パレスチナ人325万人を三重県程度のヨルダン川西岸地区に、222万人を福岡市程度のガザ地区に閉じ込めて軍事封鎖し、巨大な壁で分断。住民を「天井なき監獄」と言われる軍事占領下においてきました。その上、国際的な批判を無視して優良な土地にはどんどん入植してきました。パレスチナ住民が1987年以来、インチファーダ(総抵抗運動)を繰り返してきたのは当然です。しかし、無残に弾圧され、封鎖・占領支配は強化されてきました。
●イスラエルは直ちに停戦せよ!
ハマスへの評価が様々なのはわかります。しかし、彼らはテロリストではありません。インチファーダとそれへの無残な弾圧から生まれたものです。10.7奇襲攻撃はそれだけとりあげても事態をつかめません。軍事支配に対する抵抗権の行使の一環なのです。
問題はイスラエルがナチスの経験にもかかわらず、オスロ合意を反古にしつづけ占領支配を強化し、アメリカに至ってはそれに承認を与えて恥じないことです。ウクライナ戦争で民主主義原理の擁護が叫ばれていますが、二重原理です。ユダヤ人問題が欧米諸国の歴史から生まれたことに目をつぶり、白人支配の優位性をあくまで維持しようとしているとしか思えません。今はともかく直ちに停戦せよ!パレスチナ自治区の拡大強化に転換せよ!と訴えます。 <タナカ記>
◆10.22関電前集会には神戸の仲間5人も参加してくれ、集会後、タナカとともに久方ぶりの懇親会を新大阪駅地下の居酒屋でもちました。お世話になり感謝!朝日の記事はグッド!ぜひお読み下さい。
<NO.73 2023年10月5日発行>
汚染水の海洋放出は直ちにやめよ!
30年以上も世界の海を汚し続けるのか
東京電力は8月24日、福島原発事故による汚染水の海洋放出を開始しました。この汚染水放出は第一原発の廃炉完了まで30年続く予定です。しかし、忘れず思い出してほしい。故安倍首相は「コントロール下にある」と大ウソをついたが、圧力容器下部のデブリは13年以上たつ今も取り出す見通しは立っていません。
30年以上、世界の海を汚し続けるのはほぼ確実で、被爆国日本は核の加害国になってしまったのです。開始前に東電の早川社長は福島県漁連を訪れ謝罪しましたが結局、漁民が「外れくじ」を引かされたのです。太平洋18の島国や沿海諸国の漁民たちも福島県の漁民同様、きびしい風評被害に直面させられています。韓国や台湾では連日、抗議行動が続いている。海は日本だけでなく世界につながっているのである。
(写真は輪島市の海女さん達のデモではありません。韓国済州島の海女さんのデモです。リ・キルジュ(李・吉珠)さん撮影。再稼動阻止全国ネット№24より。)
◆「処理水」は事故原子炉とデブリにふれた汚染水だ!
処理水は、通常の原発運転時の汚染水ではありません。メルトダウンした原子炉に地下水や雨水が流れ込み、あのデブリにふれた汚染水が現在140万㌧たまっている。トリチウムを別にしても他の7割は基準越えの放射能に汚染されたもの。日本はそれを海に流すという人類史上前例のない暴挙に踏み込んでしまった。それを政府は「処理水」と言っているだけだ。
そもそも放射能を消す力は人間にも自然にもありません。100年経っても10分の1にしかならない放射能は、長期にわたり人類と生物を被ばくさせ続ける。福島事故で大気中に放出された放射能は、セシウムだけでも広島原爆の168発分もありました。これだけ大気を汚染した上に、海まで汚染するのは許されません。IAEAは核兵器保持と核開発のための国際組織であり、そのため日本の暴挙を黙認しているだけです。
◆すべては原発回帰のため。3つの理由は大ウソ!
海洋放出を急ぐ3つの理由が大ウソだったのは、大阪府立大名誉教授の長沢啓行さんが明らかにされました。①タンクがいっぱいになる。⇒国道6号から東側の広大な敷地は中間貯蔵施設。ここでの処理はすでに終盤で、施設は続々と解体され空き地となっている。②廃炉作業のための敷地が必要⇒急ぐ必要のない作業だ。乾式貯蔵施設は全く緊急性がない。そもそもデブリを取り出せる見通しがない!③汚染水は今後も増え続ける⇒敷地の徹底舗装で雨が地下にしみこまなくなり、建屋の雨漏り修理や地下水くみ上げなどで雨水・地下水の建屋への流入量は年々激減。ゼロとなる見通しもある。
それなのに汚染水放出を急ぐのは、核燃料サイクルの根幹=六ヶ所村再処理工場が動かないと各地の原発は使用済み燃料があふれ動かせない事態になるからです。毎年トリチウムだけでも18000兆ベクレルという大汚染をもたらす再処理工場のため、まず福島で海洋放出、というのが狙いです。その一方で、中間貯蔵施設への動きもはじまっています。<タナカ記>
地裁の差止め限定解釈を批判する学者意見書に基づき反論
富山訴訟第15回口頭弁論
9月11日に富山地裁で、志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)第15回口頭弁論が行われました。9月にしては厳しい暑さの中にもかかわらず、今回も富山・石川県内から原告や支援者の皆さんが富山地裁に集まり、全員が傍聴席に入ることができました。何かとお忙しい中、駆け付けていただいた皆様や、メッセージなどお心を寄
せていただいた皆様に、心より感謝申し上げます。
(写真はあいさつする岩淵正明・弁護団長) 6月28日に北陸電力本店2階ホールで第99回株主総会が開催され、166人の株主が出席しました。脱原発株主も10数人が出席し、原発偏重の経営陣に対して質問や動議など発言して、脱原発を訴えました。
≪注目する株主質問、会社回答と和田の感想≫
(1)事前質問:志賀2号機の安全対策工事費の費用は?
一括回答;志賀原発安全対策工事は、世界最高水準をめざして1千億円台の後半の支出。今後の工事予定や費用は未定。
【感想】:昨年12月の電気料金値上げに関するお客様説明会で初めて、「これまでに1600億円を使い、今後の予定も含めて総額3000億円」と説明しました。しかし今回の株主総会では再び、「1千億円台の後半」「今後の工事予定や費用は未定」と、「隠す北電」に戻ってしまいました。
(2)株主:①珠洲など奥能登地震の志賀原発への影響は。
②かつて北陸電力らが原発計画した場所で大きな地震が発生。
小田常務:①5月5日の地震では、志賀原発は震度3で、影響はない。M8,1の想定でも耐震性は確保されている。珠洲では地殻変動も起きているが、志賀では起きていない。現在、規制委で審査中である。
②珠洲原発計画にあたり、活断層等の評価を行う前に計画が凍結された。
【感想】:「志賀原発では震度3で影響ない」とはぐらかし、「M8,1でも耐震性は確保」と豪語。志賀原発周辺の活断層が調査するたびに増えていることにも触れていません。また、珠洲原発計画の質問もごまかし回答で、「地震は起きない」「安全だ」と大宣伝していたことも隠してしまいました。
(3)株主:「誓う日」アーカイブエリア見学を拒否された。また隠すのか。
水谷副社長:アーカイブエリアは当社社員や協力会社向け。一般には公開しない。
【感想】:「臨界事故隠しの失敗と教訓を語り継ぐ」ための展示物を隠すとは想定外の回答でした。社長が記念行事で「鰐口」まで鳴らしたのに。本気で「公正・誠実を誓う」のであれば、例えば本店1階ロビーに展示するとか、ホームページに展示内容を掲載するなど、いくらでも公表できるはずです。
(4)株主:テロ攻撃、武力攻撃への対策について。今や原発は攻撃目標。
福村常務:武力攻撃への対応は、国において対処するもの。航空機衝突でも原子炉の冷却を確保できるように対応する。特定重大事故対処施設も工事中。
【感想】:原発への武力攻撃への対策について、「国において対処するもの」との回答は、責任逃れです。また航空機衝突に対しても、小型プロペラ機の衝突でも想定しているのかと疑うほどの軽い回答でした。
(5)株主:①いつか必ず廃炉になる。なぜ廃炉本部設置に反対なのか。
②再稼働後、志賀1・2号機それぞれ何年間稼働を想定するのか。
福村常務:①法改正で60年超運転できることになった。
③賀1・2号機とも相当若いので、準備する時間が十分にある。
【感想】:北陸電力がすでに策定した「志賀1・2号機廃止措置実施方針」を具体化するための株主提案に、取締役会が反対しました。政府の無責任な運転延長方針に悪乗りして、解決不能の廃炉・廃棄物問題を先送りする無責任な回答でした。
≪原告側が裁判所の差止要件限定解釈を厳しく批判の学者意見書を提出≫
今回の法廷は、まず原告側弁護団が、裁判所が出した差止要件を恣意的に限定解釈する訴訟方針に対して、会社法学者が厳しく批判する意見書を証拠として提出し、その要点を踏まえた準備書面が提出・要約陳述するなど、積極的に主張を展開しました。
①甲149号証「意見書」
金沢大学人間社会研究域法学系 村上 裕 准教授
「株主の差止請求権の『回復することができない損害』を著しく限定する裁判所の解釈は、法の沿革・制度趣旨、通説や判例と乖離し、妥当でない」とする会社法学者の意見書。
②第32準備書面の提出・要約陳述
=「『回復することができない損害』の意義」に関する補充主張(2)=
上記「村上意見書」を踏まえ、裁判所の見解が会社法の趣旨・通説・裁判例と整合せず、多くの問題点を有する。原告が主張する解釈にすべき、との内容。
これらの書面は、「志賀原発を廃炉に!訴訟原告団」のホームページに掲載中。
≪被告側が弁論終結を求めるも、裁判所は否定≫
一方被告側は、前回提出の原告側第31準備書面に反論する被告準備書面(11)を提出しましたが、はぐらかしの内容ばかりで、あげくに弁論終結を強く求めてきました。
これに対して原告弁護団は、次々に発言し、被告側が回答を拒否していることを指摘し、被告代表取締役が「善管注意義務」を果たしたか否かの究明のために、取締役会の議事録の「文書提出命令」を次回弁論で申立てることを表明しました。
それを受け裁判所が、次回弁論で原告・被告双方に今回の文書への反論の提出を求め、次々回の弁論日程を指定しようとしたところ、被告側が「次々回は必要か。弁論終結を」と求めましたが、裁判長は「そこまでは考えていない」ときっぱりと否定しました。
裁判所は今回の原告側の準備書面や次回の「文書提出命令申立て」に対して、どのように対応するのか、次回の弁論の展開が大いに注目されます。 <原告団長・和田廣治 記>
●次回、第16回口頭弁論は、12月6日(水)15:00開廷です。
中間貯蔵施設の動きに警戒と連帯を
老朽原発再稼働阻止に声を上げ続ける皆さんに、能登の原発の廃炉を求める者として、心よりの敬意と微力ながらの連帯のメッセージを送ります。この間、関西電力と岸田政権は何が何でも若狭の老朽原発を一基でも多く再稼働させようと、なりふり構わぬ姿勢を見せています。中でも、上ヶ関原発予定地への中間貯蔵施設導入の動きは、関電の原発再稼働が目的であることが見え見えであるにも関わらず、祝島をはじめ現地の人々にさらなる混乱と分断をもたらすあざといやり口で、強い憤りを覚えます。
そのやり口は、私たちに珠洲原発のことを思い起させます。この珠洲の計画の一方の主役も関西電力でした。なぜ関電が能登半島の突端に原発を必要としたのか。珠洲の人々を中心とする粘り強い運動の成果で計画は撤回されましたが、疑問が解消したわけではありません。当時、噂になっていたのが、中間貯蔵施設というまだあまり耳にしたことのない言葉をめぐるものでした。怪しげな買収工作が海岸部だけでなく高台の広い農地に及んでいたのです。珠洲は、若狭と青森との間にあり、中間貯蔵施設を置くには格好の地といえます。珠洲原発の挫折とともに、中間貯蔵地のうわさも小さくなっていきましたが、まだ疑念が完全になくなったわけではありません。当時買収された土地の一部が、ほとんど誰も訪れないのに、ハーブを中心とした植物園という名目で登記されたままになっています。
この上ヶ関の問題以来、私たちは珠洲にもう一度目を向けなおそうとしています。いつどこから策謀の手が伸びてきても不思議はないからです。このことは、改めてそれぞれの地での情報の交換と、連携・連帯の大切さを教え促していると思います。廃炉に踏み切れない北陸電力の尻を蹴飛ばし続けるためにも、関電の老朽原発即時廃炉を掲げて戦う皆さんと声を上げ続けていきたいと思います。ともに頑張りましょう。<富山市・藤岡彰弘記>
(このメッセージは、若狭の原発の再稼動に反対して地元と大阪を結ぶリレーデモ、相次ぐ現地集会、立地町申入れ等にとりくんでいる関西の木原宗林さんらにあてたものです)
<各地のたより>
●関東大震災百年-朝鮮人殺害忘れるなと田村光彰さんが講演
石川護国神社の境内にある大東亜聖戦大碑の撤去を求める集会が8月12日、県教育会館で開かれ、約百人が参加。関東大震災百年と朝鮮人虐殺をテーマに元北陸大教員・田村光彰さんの講演が行われた。原発回帰のため3.11が忘れられようとしているだけではない。関東大震災10万人の死者と共に朝鮮人約3千人が差別と迫害により殺害された歴史も、小池都知事と岸田政権により消し去られようとしている。それだけに有意義な講演・集会で筆者も久方ぶりに出席した。
●佐高信さん講演に2百人が参加―鶴彬をたたえる集い
かほく市産業文化センターで9月3日、「時代を撃つ川柳人 鶴彬」と題し評論家・佐高信さんの講演会があり、2百人が参加。鶴彬獄死後85年の今年、第10回市民川柳祭、14日には歴史公園で碑前祭=第25回たたえる集いも行われた。かほく市高松の小山さん、浄専寺の平野さん毎年のとりくみご苦労様です。♪万歳とあげて行った手を大陸においてきた♪
●羽咋市・岩田崇さん 21世紀美術館で「五つの部屋」作品展
80才を迎えた羽咋市の日本画家・岩田崇さんが9月5~10日、21世紀美術館で新たな作品展『五つ部屋』を開かれた。筆者も同年であり拝見したかったが、11日の富山訴訟第15回弁論に出席するため前後の遠出は控えたため欠席。ご案内頂きながら残念です!
●珠洲市蛸島の砂山信一さん 歌集『珠洲の海』を発刊
珠洲の反原発運動の中では忘れられない方の一人で、珠洲教組の一員だった蛸島の砂山さんが歌集『珠洲の海』を発刊された。初期の5千首の中から667首をまとめもの。折々に頂いた絵ハガキの絵には感心したものだが、歌集には脱帽するのみ。ぜひじっくり読んでみたい。末尾の1首が心に残る。「死ぬ前に我も光を放ちたし今夜瞬く蛍のように」 <タナカ記>
北陸電力の回答はごまかし・「隠す北電」に戻った
2023北電第99回株主総会の報告
6月28日に北陸電力本店2階ホールで第99回株主総会が開催され、166人の株主が出席しました。脱原発株主も10数人が出席し、原発偏重の経営陣に対して質問や動議など発言して、脱原発を訴えました。
≪注目する株主質問、会社回答と和田の感想≫
(1)事前質問:志賀2号機の安全対策工事費の費用は?
一括回答;志賀原発安全対策工事は、世界最高水準をめざして1千億円台の後半の支出。今後の工事予定や費用は未定。
【感想】:昨年12月の電気料金値上げに関するお客様説明会で初めて、「これまでに1600億円を使い、今後の予定も含めて総額3000億円」と説明しました。しかし今回の株主総会では再び、「1千億円台の後半」「今後の工事予定や費用は未定」と、「隠す北電」に戻ってしまいました。
(2)株主:①珠洲など奥能登地震の志賀原発への影響は②かつて北陸電力らが原発計画した場所で大きな地震が発生。
小田常務:①5月5日の地震では、志賀原発は震度3で、影響はない。M8,1の想定でも耐震性は確保されている。珠洲では地殻変動も起きているが、志賀では起きていない。現在、規制委で審査中である。
②珠洲原発計画にあたり、活断層等の評価を行う前に計画が凍結された。
【感想】:「志賀原発では震度3で影響ない」とはぐらかし、「M8,1でも耐震性は確保」と豪語。志賀原発周辺の活断層が調査するたびに増えていることにも触れていません。また、珠洲原発計画の質問もごまかし回答で、「地震は起きない」「安全だ」と大宣伝していたことも隠してしまいました。
(3)株主:「誓う日」アーカイブエリア見学を拒否された。また隠すのか。
水谷副社長:アーカイブエリアは当社社員や協力会社向け。一般には公開しない。
【感想】:「臨界事故隠しの失敗と教訓を語り継ぐ」ための展示物を隠すとは想定外の回答でした。社長が記念行事で「鰐口」まで鳴らしたのに。本気で「公正・誠実を誓う」のであれば、例えば本店1階ロビーに展示するとか、ホームページに展示内容を掲載するなど、いくらでも公表できるはずです。
(4)株主:テロ攻撃、武力攻撃への対策について。今や原発は攻撃目標。
福村常務:武力攻撃への対応は、国において対処するもの。航空機衝突でも原子炉の冷却を確保できるように対応する。特定重大事故対処施設も工事中。
【感想】:原発への武力攻撃への対策について、「国において対処するもの」との回答は、責任逃れです。また航空機衝突に対しても、小型プロペラ機の衝突でも想定しているのかと疑うほどの軽い回答でした。
(5)株主:①いつか必ず廃炉になる。なぜ廃炉本部設置に反対なの②再稼働後、志賀1・2号機それぞれ何年間稼働を想定するのか。
福村常務:①法改正で60年超運転できることになった。③志賀1・2号機とも相当若いので、準備する時間が十分にある。
【感想】:北陸電力がすでに策定した「志賀1・2号機廃止措置実施方針」を具体化するための株主提案に、取締役会が反対しました。政府の無責任な運転延長方針に悪乗りして、解決不能の廃炉・廃棄物問題を先送りする無責任な回答でした。
<NO.72 2023年7月10日発行>
原告側の当事者照会に被告北電は回答拒否
富山訴訟第14回口頭弁論
さる5月31日に富山地裁で、志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)第14回口頭弁論が行われました。当日は晴天となり、報告集会会場の富山県弁護士会館3階の窓からも剱岳など立山連峰が裁判所からもきれいに見えました。「立山を志賀原発の放射能で汚さないために志賀原発廃炉のとりくみ有難う」と、立山の神様が微笑んでくれたようです。
今回も富山・石川県内から原告や支援者の皆さんが富山地裁に集まりました。今回も全員が傍聴席に入ることができました。何かとお忙しい中、駆け付けていただいた皆様や、メッセージなどお心を寄せていただいた皆様に心より感謝申し上げます。<原告団長・和田廣治記 *和田さんは上写真の右端。中央は岩淵正明・弁護団長>
≪原告側が志賀原発の危険性を積極的に主張≫
今回の法廷では、原告側弁護団が志賀原発の危険性や新規制基準の問題などについて書面を提出し、積極的に主張を展開しました。
①第30準備書面「被告書面(10)への反論」
(科学の不確実性、最新の地震学の知見でも地震予知は不可能など)
②第31準備書面の提出・要約陳述「被告書面(10)への反論」
(基準地震動を超える地震の可能性<耐震安全上の余裕は存在しないなど)
③裁判期日前に「当事者照会書」を被告に提出
(志賀原発2号機の新規制基準審査申請に向けた北電取締役会でのコスト検討状況など)
④原告らの立証計画のうち『差止要件の損害論』での「学者・専門家の意見書」は次回弁論までに提出の予定。(裁判所の差止要件限定解釈への批判も含まれる見込み)
今回、裁判長が原告側に対して、「学者等の意見書」の提出予定をしきりに確認しました。裁判所が自ら出した「差止要件を恣意的に限定する」訴訟方針に対して、学者らが何を言うのか気にしているようです。
一方、被告北電側は、原告側の当事者照会書の質問にも何も答えず、また原告側が提出した立証計画に対しても、すべて否定する意見書を提出しました。北電は2号機再稼動のために既に膨大なコスト=安全対策費を支出しており、料金値上げ幅も42%と全国一で、株主無視・県民無視姿勢を続けています。裁判所は今回の原告側の準備書面に対して、被告側に反論を促しており、今後の展開が大いに注目されます。
●次回、第15回口頭弁論は、9月11日(水)15時開廷です。
全国最高の値上げし再稼働方針を固守
北電第99回株主総会-強まる脱原発提案を否決
今年の北陸電力の株主総会は6月28日、富山駅前の北電本店ビルで開かれ、脱原発株主の会は提案株主82名(合計10万1千株)で志賀原発廃止を骨子とする5議案を提案しました。昨年は78名(合計8万1400株)で、志賀原発廃炉・脱原発への声は着実に強まっていますが、今年も北電経営陣は否決しました。
各電力会社の株主総会に先立つ5月16日、岸田政権の関係閣僚会議でまとまった電気料金値上げ率は右表のとおりです。火力発電への依存率が多い沖縄電力をも抜いて全国一の値上げです。再稼動のための安全対策費は、この10年間で1600億円。さらに今後3年間で1400億円と想定されています。赤字は原油高騰だけではなく、再稼動方針が元凶であり、北陸3県の消費者の犠牲で再稼動方針を維持するものと言わざるを得ません。 富山訴訟で当事者照会すら拒否する北電の株主・県民無視の姿勢は、ここでも鮮明に示されています。(総会の詳報は次号で掲載する予定)
汚染水を海に流すな!5.16東京行動に参加
国と東電は福島原発事故によるタンク貯蔵汚染水を太平洋に放出しようと強引に準備工事を進めています。そんな中、これ以上海を汚すな!市民会議、さようなら原発1000万人アクション実行委等が全国によびかけた5/16東京行動に参加してきました。
◆国会(議員会館)前集会 東京到着後直ちに正午からの衆院議員会館前での国会前集会に合流。暑い日差しの中、狭い歩道上にひしめくように連なってリレートークとコールが続けられています。昼下がりの永田町一帯にマイクの声が響き渡りました。
◆政府と国会に要請する院内集会 午後2時からは衆院第二議員会館内での院内集会に参加。要請相手は規制委員会事務局、経産省エネルギー庁等の行政担当者でした。しかし当日は、要請文の読上げと受け取りだけで、受け取った担当者の役職名さえ明かされず、野党議員のスピーチと主催者のアピールのみ。参加者からの意見表明の機会はありませんでした。それだけ岸田政権のかたくなさが露わになったわけですが、広い会場にも入りきれない参加希望者がいたことを思うと、割り切れない思いばかりが残りました。
◆日比谷野外音楽堂での抗議集会 夕方からは日比谷公園内の野外音楽堂で抗議集会が持たれました。私は再稼動阻止ネットの全国各地の仲間たちと共に、経産省前で「テント行動」を行なっている人々と交流した後、日比谷公園へ向かいました。院内集会とは異なりステージに上がる人のことばはイキイキと活気にあふれています。中でも、いわき市からやってきた漁師さんの熱のこもった発言、また、韓国でこの汚染水放出に反対する若い女性たちのグループが登壇して主催者らと交流を持てたことは、今後の広がりを考えるとたいへん意義深いものだったと思います(次頁写真参照)。集会後は、夜の銀座デモに移りました(上写真)。<藤岡彰弘>
無謀&有害!5つの原発関連法を一改悪
原子力関係の5つの法律(原子力基本法、原子炉等規制法、再処理法、電気事業法、再エネ特措法)を一括して改正するGX脱炭素電源法が5月31日に成立した。国の原子力利用の関わり方を大きく変えるにもかかわらず、一つの「束ね法案」として提出され、個々の論点についての丁寧な審議を困難にするやり方がとられた。
日本世論調査会の調査ではこの法律で企図されている「原発の最大限の活用」、「60年を超える運転期間の延長」、「原発の建て替え推進」について6割から7割以上の反対があったが、そこに示された国民の意思が顧みられることはなかった。主な問題点は2つある。
◆フクシマ以前に逆戻り!60年こえる運転も可能に
まず運転期間延長問題。この法律によって原発の運転をどれだけの期間認めるかという原発安全規制の根幹にかかわる権限が、規制側(原子力規制委員会)から利用側(経産大臣)に移される。その結果、安全審査は付随的な位置に低められ、運転期間は電力安定供給に資する等の原発利用の観点が重視されて決定されることになる。
規制よりも利用を優先した福島原発事故前の態勢への逆戻りである。延長期間の計算方法も変わる。最長20年はそのままだが、この20年には安全審査や裁判所の命令などで停止していた期間のうち、電力会社の責任ではない事由によるものについては除外され(カウント除外)、その期間分だけ20年を超えて運転することが可能になる。
運転停止中は施設の劣化は進行しないからカウント除外を認めても安全上の問題は生じないというのだが、これはおかしい。たしかに原子炉容器は運転で発生する中性子の照射によって次第に粘性低下するが(照射脆化)、運転されなければ中性子の照射がないので照射脆化は進行しない。しかしそれで原発施設全体の劣化が進行しないことにはならない。例えば原発施設中に張り巡らされ、安全確保に重要な役割を担う電気ケーブル(とりわけその接続部)は原発が運転されなくても経年劣化する。どんな施設でも運転しなくてもそれなりに経年劣化するものであり、原発はそうではないというのは全くの暴論だ。
さらに、運転停止が電力会社の責任に帰する事由によるものか否かの判定は経産省の裁量に委ねられるから、電力会社の有利なものになることは目に見えている。実際には運転停止期間の大半がカウント除外されることになるのではないか。運転開始から60年(本来の運転可能期間40年+延長期間20年)を越えて運転される原発が続出することになろう。
◆未来のない原発との心中を国民に強制
もう一つの問題は、原子力基本法第2条(基本方針)に第2項(国の責務)を追加し、国は原発を活用して電力安定供給、発電の脱炭素化、エネルギー供給の自立性向上などに資するよう必要な措置を講じる責務を有すると謳っていることである。原発のこういう扱いは、それ自体異様であるが、脱炭素の誰もが認める主役である省エネ発電はこういう扱いはされていないことで、異様さはいっそう際立つ。
さらにこの扱いはこれまでの政府の原発の位置づけと矛盾する。政府の「2050年カーボンニュ-トラルに伴うグリーン成長戦略」では、再エネは最大限の導入を図るが、それだけでは脱炭素は困難なので、不足分を原発と火力発電などで補うとされている。原発利用は補完的な位置づけにすぎない。
そしてたとえ2050年に原発が生き残っても、それ以降も再エネ利用は進み、化石燃料から再エネ電力へのエネルギーシフトで増加した電力需要部分の省エネは急速に進み、人口減によって電力需要は減少するから、原発に頼る必要性は急速に失われる。原発推進を国の責務とすることはこういう長期的な見通しと全く整合しない。<中 略>
見方を変えれば、原発には将来性がなく、それでも原発を推進しようとすれば、このような異様な扱いをするほかないということである。このことを裏付けるのが、原子力基本法第2条に新設された第3項である。そこでは、電気事業を取り巻く事情がどう変化しようが、原発事業者が安定的に事業を行うことができるようにすることを国の責務としている。原発がダメになっても国がとことん面倒を見てやると約束しているのである。
GX脱炭素電源法の意味するところは、見境も際限もなく原発に入れあげることである。しかしこれは、原発には未来がないという意味で無謀であるし、再エネ発電の普及を妨げて脱炭素を阻害するという意味で有害である。<田中良明さん発行『原発雑考』№419号より転載。見出しは編集部でつけさせてもらいました。>
<各地のたより>
●4年ぶりに団結小屋で反核・平和行進
6月24日午後、団結小屋で被爆78周年「反核・平和行進」能登地区集会が行われました。コロナ禍の影響を受け2020年~2022年の3年間中止していたものです。
七鹿平和センターを中心に能登各地区の平和センター約50名が参加し、命のネット役員会で準備した風船を上げた後、志賀原発海側搬入口までデモ行進し、志賀原発廃炉をアピールしました。
●福島県双葉地方原発反対同盟・石丸小四郎さん
このたびは多額のカンパ、誠にありがとうございました。大切に使わせて頂きます。第一原発の現状はボロボロで地震が来たら、と思うと冷や汗ものです。志賀原発2号機差止め訴訟の裁判の時に、金沢市に行った当時のことを思い出しています。何年前だったでしょうか?原発を決して許してはなりません!これは私の遺言の様なものです。皆様方の発展を願い、お礼といたします。
●志賀町富来地頭町・さわだとみこ
富来という「晴れ」の名退きて原発の町と呼ばれぬ母の故郷(穴水の室木正武氏の詠。中日新聞かな) 好きなところもいっぱいあるのですが…。
●大阪市・小林ひろ子
岸田政権は安倍より最悪!あの人のよさそうな裏で、スイスイと悪法を推進していくのですから。原発回帰は絶対反対!
●京都市・狐野秀存
原子核爆発力の火よりも、良心の火を灯し続けてください。
<編集後記>
●富来町は2005年9月、志賀町と合併しました。それまで西海漁協を中心とし、富来町木勤労協を始め多くの町民による志賀原発反対運動が展開されました。原発のおこぼれは旧志賀地区があくまで独占するなど、対等合併とは言いがたく、さわだとみこさんの便りにはそのことも含まれているのでしょう。
●岸田政権に4野党(維新、国民民主、参政、政女)がすり寄り 福島原発事故をなかったことにして原発に回帰する原発関連5法案の一括改悪。与党の自公だけでなく4野党までが賛同。最悪です。次の国政選挙では、これら「ゆ党」に厳しい審判が必要です。<タナカ記>
<NO.71 2023年4月25日発行>
裁判長 原告側に学者意見書の提出求める
富山訴訟第13回口頭弁論
さる3月20日に富山地裁で、志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)第13回口頭弁論が行われました。当日は暖かな晴天で、雪を抱いた剱岳など立山連峰が裁判所からもくっきり見えました。「こんなきれいな立山を志賀原発の放射能で汚してはいけない。そのためにも一日も早く志賀原発廃炉を実現したい」と、立山の神様にお祈りしました。
今回も富山・石川県内から原告や支援者の皆さんが富山地裁に集まりました。今回も全員が傍聴席に入ることができました。何かとお忙しい中、駆け付けていただいた皆様や、メッセージなどお心を寄せていただいた皆様に心より感謝申し上げます。<原告団長・和田廣治記>
≪原告側が志賀原発の危険性を積極的に主張≫
今回の法廷では、原告側弁護団が志賀原発の危険性などについて書面を提出し、積極的に主張を展開しました。また、今後の立証計画の概要も提出しました。
①第27準備書面「非常用取水設備の耐震重要度分類はCランク」
(緊急時の原子炉冷却用の取水設備が、一般建物並みの耐震基準で倒壊の危険性。)
②第28準備書面の提出「被告書面(9)への反論『使用済み核燃料プール』」
(核燃料プールを覆うのはコンクリートの原子炉建屋だけの危険性。)
③第29準備書面の提出「被告書面(9)への反論『武力攻撃・テロ対策』」
(志賀原発への軍事・テロ攻撃の現実的可能性と、防御不可能の危険性。)
④「原告らの立証計画概要(学者等の意見書や証人尋問、原告本人尋問)」
(差止要件の損害論、志賀原発の危険性、稼働コスト、被告の対応など)
これまでの弁論で、裁判所や被告側は「原子力規制委員会による新規制基準の適合性審査を請求すれば、取締役は善管注意義務を果たしたと言える」と言っています。しかし「新規制基準」には不十分さや欠落があり、事故の危険性があることを、今回の3本の準備書面で具体的に主張を展開しました。
今回、裁判長が原告側に対して、「原告の立証計画のうち『差止要件の損害論』についての学者等の意見書を、できるだけ速やかに提出してほしい」と求めました。被告側が結審を求める上申書を提出しましたが、裁判所はさらに審理を進めることを示したもので、今後の展開が大いに注目されます。
次回、第14回口頭弁論は、5月31日(水)15時開廷です。
原子力規制委の愚挙・暴挙相次ぐ中
第23回総会&「滝口保さんを偲ぶ会」を開催
原子力規制委員会は2月13日、原発の運転期間を原則40年から60年超運転を可能とする制度への見直し案を多数決で正式決定しました。それだけにとどまらず3月3日には志賀2号機の再稼動の前提となる新規制基準への適合審査会合で、2016年に活断層の可能性を否定できないとした規制委の有識者調査団の判断をくつ返し、「敷地内に活断層はない」とする北電の主張が妥当だと判断しました。
原発回帰の大号令を出している岸田政権に一刻も早く寄り添おうという、規制委員会の自殺行為と言える愚挙・暴挙です。<4ページに詳報>脱原発・廃炉の運動はさらに必要になっています。残念なことに年頭の1月21日、事務局長を務める滝口保さんが末期がんのため逝去されました。この状況の下で、命のネットは4月16日に、第23回定期総会で下記の活動方針と決算報告(6ページ参照)を承認するとともに、「滝口保さんをしのぶ会」を開催しました。
しのぶ会には珠洲の柳田さんや金沢の西田さんをはじめ、みんなで滝口さんの思い出を語り合いました。当日、奥さんは法事で出席できませんでしたが、 富山訴訟原告である滝口さんの思いを受継いでいくことも紹介されました。
≪活動方針―ヨウ素剤配布、小屋と看板の維持管理、富山訴訟を軸に≫
①ヨウ素剤は薬品効能が3年から5年に改善されたので、現在の隔年配布を3年毎に1回更新配布に(今年は1次希望者約4百名に更新配布)。
②活動報告や情報提供などのため、命のネット通信の発行を継続する。
③定期総会や随時集会開催し、志賀原発や地域の問題について問題提起する。
④団結小屋を維持管理し県内外の人々との交流の場として活用。風船上げ月例行動を継続する。
⑤アピール看板の維持管理 命のネットが設置中の脱原発看板4か所(猫の目交差点、赤住バス停、団結小屋、西海・加納作次郎碑横)の維持管理(今年は赤住バス停横看板を修復)
⑥各地の運動との連携を継続 北電株主総会でのアピール行動や志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)への支援、再稼働阻止全国ネットとの連携を続ける。
※メンバーの年齢や体調などを配慮し、健康や安全を第一に無理のない範囲で実施します。
滝口保さんの逝去を悼む
心の伴走者だった滝口保さんが年頭の1月21日、享年74歳で他界された。まじかに日本海を眺望でき、千里浜なぎさドライブウェイと目と鼻の先にあなたは住居を構え、もう片方には長く延びる眉丈山の山並みを日々眺めては、原発廃炉の固い志を抱き、運動を広げることを一心に願って実践してきましたね。
滝口 保さん! あなたと私は一年違いで高校教員の定年退職後も、この先はさらに元気で頑張っていこうと支え合ってきた親しい間柄でした。そのような力強い伴走者あなたが、不治の病だと宣告され、渾身の力を尽くしたにもかかわらず道半ばにして旅立たざるを得なかった無念さは計り知れなかったに違いありません。心寂しいという以上 団結小屋で風船をに悔しさがこみ上げてきました。心からご冥福を祈ります。
あなたとの出会いは30年程前のことでした。同じ高等学校教職員組合の組合員として県内の教育研究集会や日教組の全国教研にも参加するようになったのが始まりです。あなたはレポーターとしても参加したよね。当時はすさまじい能力主義教育への再編攻撃の真っ只中にあり、何がどう問題なのか組合員同士で議論し運動につなげていた頃でした。その頃のあなたは事態の重大さに真摯に向き合い、よき教師はよき組合員という両面で運動に関わることを通して自分の歩むべき途を考えていた人で、その一途ともいえる姿勢が今でも深く印象に残っています。
現役の頃はどうしてか、2人で会って話したという記憶はありません。定年退職後、懐かしさのあまり会ってみることになりました。退職後の生活の話題が中心だったようです。いつの時だったか、あなたが「命のネット」の運営委員であること、その後に事務局長の任にあることを知ってからは、私の関心と相まってあなたは「原発と人間とは絶対共存できない。福島原発の大惨事の教訓だ。今の政府は何だ」と、いつもの穏やかな表情を一変させ身を乗り出して語りだしましたね。その怒りに満ちた発言と具体的にやっていることに私は心が揺さぶられ、命のネットの会員になりました。
総会、集会、裁判の傍聴に参加する傍ら、合間を見て年に数回会っては原発廃炉の運動で話し合ってきました。「日本中が網の目のように地震の断層だらけだ」と言って断層の赤線で国土が真っ赤になっている地図を見せたり、赤住の団結小屋から飛ばした風船の着地場所を見せ、原発事故で放射性物質がいかに広範囲に拡散するかを実証した取り組みなどをつぶさに語ってくれました。他県の反原発闘争とも連帯し、福井はもとより伊方原発再稼動反対のたたかいにも労を惜しまず参加していたのです。北電の株主8人の1人として株主の立場からも志賀原発廃炉のために北電を相手取り、富山地裁に提訴するたたかいの原動力にもなっていました。
2年程前のこと、あなたは「自分が高教組の組合員になったのは高教組が原発に反対していたからだった」と若いころの自分をふり返りつつ「今までの運動はけっして間違っていなかった」と述懐していたことが昨日のことのようです。これからも息長く親しい関係を大事にして悔いのない生活にしたいと思っていた矢先のことでした。今は残念でたまらない。
最後になったが、あなたから3年前にもらった小さい数本のアケビの苗が昨年イノシシに根元を掘り起こされたものの、枯れずへこたれずに伸びています。いかにもしなやかで、そしてしたたかです。ありし日のあなたの生きざまを思い起こさせるようではありませんか。
ありがとう、滝口さん!どうぞ安らかにお眠り下さい。 <金沢市・西田直智>
フクシマから僅か12年で原発回帰&大改悪へ!
“記憶のたたかい”続けよう
●地震・津波大国で,「狂気の国策」いつまで続く?
1854年11月4日 安政の東海地震
同 5日 安政の南海地震
1923年 9月1日 関東大震災
1944年12月7日 東南海地震
1945年1月13日 三河地震
1995年1月17日 阪神淡路大震災
2004年10月23日 中越地震
2007年3月25日 能登半島沖地震
2007年7月16日 中越沖地震
2011年3月11日 東日本大震災
3.11フクシマの原発震災から僅か12年で原子力規制委員会は岸田政権の原発回帰の大号令に合わせ、規制委員会の衣を投げ捨てました。原発の60年超運転の容認を多数決でごり押ししただけでなく、さらに自らの有識者調査団の判断をくつ返して「志賀原発敷地に活断層層はない」という北電の主張を認めました。
日本は4つのプレートの上に乗っている世界有数の地震・津波大国です。活火山も111あります。運転期間や規制基準のアレコレ以前に、こんな国土に原発や原子力施設を立地するのは、もともと「狂気の国策」だったと言わねばなりません。
最高裁は被災者の賠償請求訴訟で「東日本大震災級の大津波が来れば事故は防ぎようがなかった」と国の責任を認めませんでした。勝俣元会長ら東電経営陣の刑事責任を問うた刑事裁判でも無罪判決を出しています。狂気の沙汰を国策としてきた責任が問われているのに、国と電力会社を免罪し、当該の住民に我慢せよ・黙って従えと言っているのです。
●国の劣化どこまで ?「稲むらの火」は消えた!
昨年は関東大震災から100年でした。年表の通り、この170年でも大地震は相次いでおり、いま東南海トラフ地震の防災が大きく問われています。1854年の安政地震、1944年の東南海地震、45年の三河地震は正に、この南海トラフ地震でした。防災には限度があり、おまけに原発が存在しています。原発震災は避けられません。その時また最高裁は「仕方がなかった」、規制委員会は「もともと安全を保障していたのではない」と言うのでしょうか。
安政地震の際、紀伊の国・和歌山県有田郡広川町の濱口梧陵は自分の家や財産を顧みず、収穫した稲束を燃やしていち早く危険を知らせて津波から村人を救いました。名高い『稲むらの火』の逸話はこの時のものです。国、電力、司法のどこに濱口梧陵の精神があるでしょうか。
日本の劣化はどこまで続くのか。「稲むらの火」は消えてしまいました。劣化の報いは必ず来るのです。ここ170年の国土の大震災の歴史を忘れてしまう、無かったことにしてしまう日本に、私たちは記憶のたたかいを続けねばなりません。
●原発震災は人災ー規制委に覚悟はありや?
2000年10月 鳥取県西部地震
2003年5月 三陸南地震
2003年9月 十勝沖地震
2005年3月 福岡県西方沖地震
2005年8月 宮城県沖地震
阪神淡路大震災以降の中越、中越沖、能登半島沖地震に加え重要と思われる地震を掲載しました。宮城県沖地震は女川原発で設計限界を超える揺れを記録し、国や電力の直下地震の想定が低すぎることを示しました。志賀2号機の運転差し止めを命じた金沢地裁判決でも根拠の一つになっています。
07年7月の中越沖地震では、耐震設計をこえる揺れが柏﨑刈羽原発を襲い、建屋境界は1㍍近くズレ、作業台は落下、クレーンも破損、防油堤も破断し変圧器から出火するなど、原発中枢部の被害はすさまじく原発震災一歩手前の事態でした。敷地内を走る断層が地震に連動して大きく揺れたためと考えられます。ここで見直していればフクシマは防げたはずです。
07年3月の能登半島沖地震の時、幸か不幸か志賀原発1号機は相次ぐ事故で、2号機は臨界事故隠しが発覚して共に長期停止中でした。地震は輪島市門前沖の3つの海底断層と陸域の断層が動いて起き、大きな被害を生じました。当時、北電は3つの海底断層をバラバラに扱い過小評価していました。陸域断層に至っては「30㌔圏内は詳細調査し、原発に影響を及ぼす活断層は全て確認」したとして存在すら考えていなかったのです。
その後、北電は新耐震指針に基づき活断層16本の評価を修正。規制委の現地調査が進むとそれまで否定していた直近の福浦断層や前面海域の断層などを認めました。まるで後出しジャンケンです。後出しジャンケンで北電が膨大な資料を整えるのを待って、規制委員会は「専門家なら誰が見ても活断層だ」としていた自らの判断を覆したのです。原発震災は人災です。規制委にその責任を取る覚悟はあるのでしょうか。<タナカ記>
<各地のたより>
●後期高齢者の声!―皆さんの考えを聞かせて
(白山市・吉田敏弘)私は現在、78才の後期高齢者である。最近の世の中、年寄りは邪魔者扱いである?少子化対策、軍事費2倍増の自民党はもちろんのこと、一部野党の中でも賛成方向の意見が目立つようだ。野党、労働団体、だれ一人、年金問題取り上げてくれません。
物価が上昇すればスライド式で年金額も変更するはずであるが?物価、高齢者医療保険、介護保険など軒並み値上がりである。私は孫たちにプレゼントするためシルバー人材センターで草刈り作業をしています。今の年金額ではとてもプレゼントなど出来ません。年寄りのひがみかもしれないが、高額所得者優遇で弱者には手当もしてくれない気がします。
反原発、軍備増強反対運動を応援したいのだが、最近政治問題に関心が薄れてきたように思っています。皆様方には考え方を一度お聞きしたく手紙を書きました。返答を頂ければ幸いです。
●高浜原発の緊急停止―原因は? 心配です (宮津市・上辻治)
連日、寒い日が続き、先頃は「大雪が降った」として羽咋の名前が何度も流れてきていました。当地も10㌢位積もりました。「サンパチ」を思い起こせば、温暖化を事実として実感させられます。1月30日、高浜原発4号機が緊急停止しました。関係者は声を揃えて「安全」と言っていましたが、その原因をきっちり公表されないのが不安です。60年以上、旧式原発を使い続けることに問題なしとする根拠、そしてその責任を誰が負うのか―山ひとつ向こうの地の出来事に無関心ではいられないのです。
●命のネット通信№70有難うございました。田中良明さんや小出裕章氏の文章をじっくり読ませていただきました。こちらのタンカン送らせていただきます。(奄美大島・張間隆蔵)
<編集後記>
●皆さんの意見お寄せ下さい!―白山の吉田さんのたよりに応え、ぜひ皆さんのお考えをお寄せ下さい。6月中までに、ぜひよろしく!
●やはり制御棒の脱落トラブルではー高浜原発の緊急停止。おそらく臨界事故につながりかねない制御棒の脱落ではないかと思います。臨界事故を起こした志賀1号機は、その後も制御棒のトラブルを繰り返し、福島事故の直前に停止に追い込まれています。60年超運転や敷地内断層の無視などとんでもない話です。
●ドイツが脱原発完了!-総会前日の4月15日、33基の原発で稼働中だった3基が運転を停止し、ドイツは脱原発を完了しました。ウクライナ戦争で最もエネルギー危機の影響をうけたにもかかわらず福島の教訓を忘れなかったのです。一方、事故当事者の日本は、エネルギー危機をこれ幸いと原発回帰へ官民挙げての忘却劇。情けない限りです。<タナカ記>
<NO.69 2022年10月15日発行>
「ふるさとを返せ!」2人の原告が語る
福島県浪江町津島の住民が今負わされていること
9月14日、羽咋労働会館2階ホールで「のとじょネット」と命のネットワークが共催し、約40名が参加して三瓶春江さんと佐々木やす子さんに、福島県浪江町津島地区の被害者原告団による訴訟とふるさと津島に寄せる思いを語って頂きました。
はじめに、同地区の現状を短くまとめたDVDを上映しました。イノシシや猿、鹿などの野性動物たちが人が住まなくなった家を荒らす様子や、立派なたたずまいの屋敷が手入れできないために土台の方から腐り始め、とうとう解体せざるを得なくなったことなど、なんともやるせない光景のDVDでした。(以下、お二人の話を短くまとめました。紙面の都合上、はしょった部分もあることをご承知下さい)
◆佐々木やす子さんー息子の遺骨も納められない、そして家も・・
原発事故の後、8月に息子がガンで亡くなった。息子の遺骨を夫の眠る津島の墓地にいっしょに納めようにも、線量が高いため、お坊さんも立ち入ることができず、あれほどふるさとに帰りたがっていた息子の思いをかなえられなかった。その悔しさ無念さは今も残り続けている。
自分の家も8年前までは何ともなかったが、制限区域内のため時々しか訪れることができず、イノシシに潜り込まれ今ではもう手の施しようがない。100年以上続いてきた家を自分の代で途絶えさせてしまう、そのことへの複雑な思いは決して一言では言い表せません。
一方、国道114号線の除染がすすめられ、国道の周りは「際(キワ)除染」されているが、そこから一歩でも外れたところは全く手を付けないまま。その線引きからタッタ45cm離れた自分の家に入るのに、ずっと離れたところで線量の計測をし、制限された時間で家まで往復することになり全く非合理です。自由に自分の家に入りたい。どれだけ言っても責任者は現場を見に来ない。こんなおかしなことは許せません。私は訴え続けます。
◆三瓶春江さんー被曝を放置し続け・・私たちは同じ国民なのか?
津島というのは戸数450、人口1400人ほど。私たちはそこで、近所同士で助け合う「結い」と「絆のある暮らし」を大切に生きてきました。
事故のすぐ後、津島地区は避難住民を受け入れる側だったんですよ。私たちは、何千人という避難者の皆さんのために、畑の野菜を取りに行ったり、外に出ておにぎりや豚汁を用意したんです。その時、そこに防護服と防護マスクに身を包んだ人たちがいたんです。ところが、彼らからは「危険だ、逃げろ!」という一言すらなかった。これは人としてどうなのか!その場には小さな子どもたちも大勢いたんですよ。
国民を守るべき国が、そうやって子どもたちの被曝を放置し続けた。私はそのことがどうしても許せないんです。居住制限の目安は、福島では未だに20ミリシーベルトです。ふつうは1ミリシーベルト以上のところは立ち入ってはいけないことになっているのに、これは明らかな差別です。私たちは同じ国民として扱われていないんですよ!
今、原発事故時に10才以下だった子どもたちの中で、甲状腺ガンと診断された若者たちが声を上げ始めています。それに対し子どもを守るべき立場の国が、彼らと争っているのです。私は許せない。こんな国のありようを怒らなくどうするのか。子どもたちを守らなくてどうするのか。
亡くなっていった方たちのこともあります。この間、父が亡くなりましたが、納骨をどうするのか。父の無念の思いを汲めば津島に、と思いますが、いまの津島は誰も来れない寂しい所です。私同様、多くの人たちが悩んでおり、その結果、行き場を決められないお骨がたくさんあるのです。
◆手に手をとって共に進んでいきましょう!
――ここまで語られた問題の深さを受け止めきれないでいる私たちに、三瓶春江さんは以下のように明るくよびかけ、話を終えました。佐々木やす子さん、三瓶春江さん、ありがとうございました。―――それでも、こんな私たちと皆さんとが寄り添って、手に手をとっていけば、また違う社会を見出していけるのではないかと思います。ともに進んでいきましょう。
<富山市・藤岡彰弘 記>
講演終了後、三瓶さん、佐々木さん(前列右側のお二人)を囲んで。9月14日、羽咋労働会館2階ホールで。
争点を恣意的に狭める裁判官を厳しく批判!
富山訴訟第11回口頭弁論
10月5日に富山地裁で、志賀原発株主差止め訴訟(富山訴訟)第11回口頭弁論が行われました。今回も多くの原告・支援者の皆様に参加いただきました。
≪争点を恣意的に限定した裁判長≫
前回第10回口頭弁論では、裁判長が今後の裁判の方向性について、原告側が求める論点や求釈明の申立てをほとんど否定する見解を示しました。
①会社法の差止の要件「回復しがたい損害が生じる恐れ」とは、「重大事故が発生して広範囲に放射能が放出し、会社の全資産でも補填できない事態」と限定。
②「被告は規制委に審査をゆだねているので、善管注意義務は果たしている」と会社主張を鵜呑みにした。
③それでもなお善管注意義務違反を言うには、「特段の事情」の場合だけと限定。
≪原告弁護団が全面的に批判≫
今回、原告側は第23準備書面(裁判所の見解について)、第24準備書面(新規制基準の限界)、第25準備書面(志賀原発の経済性)の3通を提出しました。
原告弁護団の坂本義夫弁護士は、要約陳述の中で裁判官に対して、「富山地裁の解釈は、差止めの要件を不当に限定しており、間違っている」と批判しました。
①「会社の全資産でも補填できない」場合は、北電の総資産の約1兆5千億円以上に限定される。裁判所の見解は学説や判例からも外れている。
②再稼働のために年5百億円の維持費、約2千億円の安全対策工事や数百億円のテロ対処施設など多額の費用が必要。再稼働の見通しも費用回収の見通しも不明な中で、再稼働方針を決めた取締役の責任が問われている。
≪審理は続行へ≫
裁判所は原告側の批判には何も見解を示さず、原告側に被告書面への反論を、被告側に原告第24準備書面への反論を指示し、審理続行を示して閉廷しました。
今後も裁判の行方にぜひご注目下さい。次回は来年1月11日(水)です。
◎第12回、第13回口頭弁論にもぜひご参集下さい!
◆第12回口頭弁論 1月11日(水)午後3時~ *いずれも
◆第13回口頭弁論 3月20日(月)午後3時~ 1号法廷
東電株主代表訴訟で歴史的判決!
◆末田 一秀 (はんげんぱつ新聞編集長)
<はじめに―関電株主代表訴訟>
この3年ほど、私は、関電役員が高浜町元助役とその関連会社から3億7千万円受け取っていた事件の追及に力を入れています。真相を暴けば、裏金で地元工作する仕組みを壊せると思うからです。刑事告発は不起訴になりましたが、検察審査会で「起訴相当」「不起訴不当」の議決を勝ち取りました。旧役員らを起訴に持ち込めるよう、取組みを行っている最中です。
また、刑事告発だけでは真相解明できないと河合弁護士にそそのかされ?、株主代表訴訟も提訴し、原告になりました。株主代表訴訟は、会社に損害を与えた役員に損害賠償請求するよう会社に要求し、会社が応じなかった場合に株主が訴訟を提起できる制度です。したがって、勝訴しても賠償金は会社に支払われ、原告は一銭の得にもなりません。それでも闘わないわけにはいきません。(左写真 7月13日、東京地裁前)
東電旧重役に13兆円余の損害賠償支払いを命ず ・ ・ ・ 東電株主代表訴訟
10年闘ってきた先輩にあたる東電株主代表訴訟原告団は、7月13日に画期的な判決をかちとりました。 取締役として当然の注意を怠ったから福島事故が起きたとし、東京地裁は勝俣元会長、清水元社長、武藤元副社長、武黒元副社長に総額13兆3210億円!の損害賠償支払いを命じたのです。もう一人の被告小森元常務についても善管注意義務違反を認定していますが、取締役になった時期が遅かったので対策を講じても事故を回避できなかっただろうと賠償金支払が免除されただけで、ほぼ「完勝」の判決でした。
朝倉裁判長は、最高裁事務総局の要職を歴任した「エリート裁判官」といわれていて、福島原発のサイトに裁判官として初めて入り、津波に無防備な原発や無人になった被災地を自分の目で確かめました。そして判決文で「原発において、ひとたび炉心損傷ないし炉心溶融に至り、周辺環境に大量の放射性物質を拡散させる過酷事故が発生すると、当該原発の従業員、周辺住民等の生命および身体に重大な危害を及ぼし、(中略)地域の社会的・経済的コミュニティーの崩壊ないし喪失を生じさせ、ひいてはわが国そのものの崩壊にもつながりかねない」と書いています。
地震津波を予測した、国の地震調査研究推進本部の長期評価を信頼できるものと認定し、一度決まった対策を土木学会に依頼することで先送りしたり、東海第二原発などで行われた建屋の水密化工事すら行わなかったことを断罪したのです。判決文言い渡しの際に、7カ月かけて書いたのでしっかり聞くようにと言ったそうです。
被災者の賠償請求訴訟で、最高裁は「東日本大震災級の大津波が来れば事故は防ぎようがなかった」と国の責任を認めず、勝俣元会長らの刑事責任を問うた裁判でも2019年に無罪判決が出ています。長期評価を信頼できるものとしなかったり、水密化工事を否定したりしていました。丁寧に証人や証拠調べをして現場も確認した今回の判決は、流れを変える正しい事実認定をした判決と言えます。原発を運転する電力会社経営陣に責任の重さを突きつけているのです。
安倍よりひどい岸田政権
3.11福島事故をなかったことに!
<編集後記>
●東京都足立区・平坂謙次さん 資源価格高騰・脱炭素を理由に、原発再稼動の動きが出てきていますが、腰を落ち着けてがんばっていきましょう。
●白山市・米山 豊さん 脱原発だけではなく、減電力になるように日々の生活を考えねばならないと日頃思っています。能登の風力発電―過疎化とも相まってのことと思いますが、日本全体のこととして考えていきたいです。
●京都府宮津市・上辻 治さん 京都の丹後半島にも(伊根町に集中するようですが)風力発電所が多くの山々の風通しの良い個所に林立する計画があります。何年か前、かなりの数の「風力発電」が設置されたのに、落雷とか塩害による故障などで使い物にならなかったようなのに。
住民の数が2000人を下回り、老人ばかりの町を狙い撃ちのように、あれこれと「新事業」(少し前にはレーダー基地が創設され、この時も地元の活性化が期待できると)を押し込んできています。全国各地で地震が頻発しているのは本当に気になります。能登半島もかなり揺れていますね。「わが亡き後は洪水来たれ!」―これが各地の裁判官の本音ではないでしょうか。骨のあるジャッジマンよ来たれ!
●編集部より 9月7日の北陸中日新聞の特集「わがまちの偉人」に、かつて二度、珠洲市長選挙をたたかわれた故・樫田準一郎先生が取り上げられました。必読!
<NO.68 2022年7月15日発行>
珠洲群発地震も軽視し株主提案を否決!
さる6月28日に富山市の北陸電力本店で、第98回北陸電力株主総会が開催されました。朝から30℃を超える猛暑の中、午前9時から北電本店前でアピール行動が始まり、「北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会」メンバーや、北野進志賀原発を廃炉に!訴訟原告団長、盛本芳久石川県議、命のネットから多名賀哲也さんなど、約20人が集まり、入場する株主や北電社員らに志賀原発廃炉などを訴えました。
過去最大の赤字決算にも反省・危機意識みられず
北陸電力は、志賀原発1・2号機が停止して11年経過する中で、過去最大の赤字決算という経営危機状態に陥っています。株価は低迷し、株主配当も雀の涙など、原発偏重の経営方針のゆがみが明らかになっています。
加えて、珠洲市周辺で群発地震が続き、活断層に囲まれている志賀原発に対して、石川・富山県民の不安が高まっています。(右図参照―当日配布されたビラより転載)
そんな中で開催された株主総会ですが、株主の質問にも会社経営陣は不十分な回答に終始し、残念ながら議論がかみ合わないまま、議案採決が行われました。総会の所要時間は1時間41分で、同日に開催された原発保有9電力会社の中で最短という恥ずかしい結果になりました。
ウクライナ戦争と原発でも、ひたすら逃げの答弁
また、本年2月にウクライナに軍事侵攻したロシア軍が、チェルノブイリ原発などを戦車で攻撃・占拠しました。そこで、株主が志賀原発の防護対策について質問しましたが、北電側はひたすら逃げの姿勢に終始しました。
株 主:志賀原発では、軍事攻撃やテロ攻撃の防護対策はあるか。
副社長:軍事攻撃には国が対処すること。テロ攻撃にはテロ対処施設で対応。
株 主:志賀原発の原子炉建屋天井の厚さは何cmか。
副社長:テロ対策から、回答を控える。
原発に関する情報を株主にも隠し、国に丸投げの北陸電力の姿勢を前に、「北陸電力に原発運転の資格なし!」と改めて痛感しました。
今回も多くの皆さんにご協力いただき、感謝申し上げます。 <「北陸電力と共に脱原発をすすめる株主の会」・和田廣治 記>
(*編集部注)今年の第98回北電株主総会では、78名(合計8万1400株)の株主が「原子力発電事業から全面撤退し、再生可能エネルギーを中心とする電力及び熱供給事業を営む」などの5議案を株主提案しましたが、上記のとおり否決されています。
弁論更新で副団長・川原さんが意見陳述!
次回、裁判所に前面反論へ 富山訴訟第10回口頭弁論
志賀原発株主差止め訴訟の第10回口頭弁論が6月15日、富山地裁1号法廷で行われました。定数の35席に戻った傍聴席は、ちょうど満席になり、この裁判への関心の高さを示すことができました。今回は2人の裁判官が交代した弁論の更新にあわせて、原告団副団長の川原登喜のさんが原告意見陳述を行いました。
《裁判官の交代》 松井洋裁判長(留任) 三木洋美裁判官(新任) 染井明希子裁判官(新任)
川原さんの意見陳述に続いて原告側弁護団が第22準備書面を要約陳述し、原告側の求釈明の申立ての意義と、取締役会議事録の提出の必要性を熱く鋭く訴えました。これに対し被告・北電側弁護団は、準備書面(8)を提出し、「本訴訟で問題になっているのは、取締役の善管注意義務の有無。法の手続きを経て認可された結果、原発稼働ができ、規制委審査は公開されている。取締役会議事録を提出する必要はない」と、原告側の求釈明申立てや規制委の適合性審査の問題点の指摘も否定しました。、
その後、裁判長から今後の審理にあたっての裁判所としての見解が示され、原告側の求釈明の申立てのうち、使用済み核燃料貯蔵プールの危険性については申立てを認めて被告側に回答を求めました。
≪裁判長、今後の方向性について見解示す≫
しかし一方で、大半の項目については申立て要件を厳しく限定して、被告側に有利な見解を示し、申立てを認めませんでした。ただ、志賀原発で一番無防備な使用済み核燃料貯蔵プールの危険性については、差止めの理由になる可能性もある問題であり、裁判所がそこに注目したことは、今後の裁判の方向性に大きく影響するものです。
ただ、原告側の大半の求釈明の申立てを否定したことは、到底認められません。松井裁判長が今後の方向性に関して述べた見解は、①差止めには、「回復しがたい損害が生じる恐れがある」が要件である。②原子力規制委の決定を経ないと原発の稼働はできず、被告は規制委に審査をゆだねているので、善管注意義務は果たしている。③それでもなお善管注意義務違反を言うには、「特段の事情」がある場合だけである。この「特段の事情」に照らして検討したところ、「使用済み核燃料プールの危険性」①②について、被告に説明を求める―というものです。
規制委の審査を受けることを適法性の根拠とし、審査内容の正否を問わない点は最大の問題であり、原発の実態とかけ離れています。次回の第11回口頭弁論で原告側は、今回裁判所が原告側求釈明申立てを認めなかった部分について、全面的に反論するとともに、被告側の主張にも反論する予定です。ぜひとも多くの皆さんに、引き続きご支援をお願いいたします。
*注)善管注意義務 「善良な管理者の注意義務」の略。業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて通常期待される注意義務のこと。
◎第11回、第12回口頭弁論にもぜひご参集下さい!
◆第11回口頭弁論 10月 5日(水)午後3時~ *いずれも1号法廷
◆第12回口頭弁論 1月11日(水)午後3時~
◆「命がけの電気はいりません!」―川原さん意見陳述
原告の川原登喜のです。今回、弁論の更新にあたり、原告団副団長として、私達原告が本訴訟での被告らの不誠実な対応に株主として遺憾に思うとともに、どのような思いで裁判所に期待を寄せているかなどについて、原告の生の声を聞いていただきたく、意見を陳述いたします。
≪はじめに≫≪私が原子力発電に疑問を持ったのは≫≪北陸電力の株主として≫⇒割愛
≪福島県で小児甲状腺がん患者が急増している≫
2011年3月の福島原発事故では、放射性ヨウ素などの放射能が福島県や関東一円に大量に放出されました。あれから11年の本年1月に、事故当時6歳から16歳だった男女6人の福島県の小児甲状腺がん患者が、東京電力に損害賠償を求めて提訴し、5月26日に東京地裁で第1回口頭弁論が行われました。いずれも10代で甲状腺がんになり、甲状腺の片方や全部の摘出手術を受けたり、肺に転移するなどの例もあります。この6人のうち4人ががんの再発を経験し、手術を繰り返したり「アイソトープ治療」など厳しい治療のために、大学や仕事を辞めざるを得なかったり、日常生活が大きく制限され、再発や転移への不安を抱えて生活しています。
このような小児甲状腺がんの患者が、福島県で急増しています。2年前の意見陳述で私は、「2019年10月の福島県の発表で231人が小児甲状腺がんと診断され、うち175人が手術を受けた」と述べました。しかし2021年10月の福島県の発表では、266人が甲状腺がんと診断され、うち222人が摘出等の手術を受けたとのことです。
このほかにも全国がん登録などで把握された集計外患者27人を合わせると、少なくとも293人が小児甲状腺がんと診断されたとのことです。小児甲状腺がんの発生確率は、100万人に1~2人程度と言われますが、福島県では調査対象者が38万人なのに293人もの患者とは極めて深刻な状況です。しかも222人が甲状腺摘出手術を受けており、とても「過剰診断」などと言って福島原発事故の影響を否定することは許されません。
多くの子ども達が小児甲状腺がんなど様々な病気で苦しむことを何としても防ぎたいという思いで、これまで北陸電力株主総会で脱原発を求めてきましたが、被告ら取締役は今も、福島原発事故の被害に苦しむ子ども達の現実を直視しようとしません。
≪雪国富山で実効性のある住民避難計画は可能か≫
2021年3月に水戸地裁は、実効性のある住民避難計画ができないとして、東海第二原子力発電所の運転差止を認める判決を出しました。ちょうどその年の富山県では1月から大雪となり、1メートルの積雪で県内全域の交通や生活が大混乱しました。高速道路やすべての国道や県道をはじめ、地方道や生活道路に至るまで、県内全域で通行止めや大渋滞などが長時間続きました。富山県東部の入善町にある私の自宅でも、大雪のために5日間も外に出られませんでした。
もしこのような積雪時に志賀原発で事故が発生し、放射性物質が流出した場合に、富山県に住む私達がどうやってどこに避難できるのでしょうか。避難計画は自治体が作成することだと言って、発生源の北陸電力が責任逃れをすることは許されません。
≪被告ら取締役は原発の専門家ではないのか≫
本年3月16日の第9回口頭弁論で、被告側弁護士の法廷での発言を傍聴席で聞いていて、私は驚くと共に哀れに思いました。福島原発事故を踏まえて北陸電力取締役会で被告ら取締役がどのような議論を経て志賀原発再稼働方針を決定したのかを確認するために、取締役会議事録の開示を求めていますが、被告らは拒否しています。
そして、この日の弁論で被告側代理人は「被告ら取締役は経営のエキスパートだが原発の工学や技術の専門家ではない」「専門的知見を有していない取締役が、どうやって検討するというのか。」と法廷で堂々と陳述しました。傍聴席で聞いた私は驚きました。金井豊被告は北陸電力本店原子力部長から取締役になり、石黒伸彦被告は志賀原発所長代理から取締役になり、いずれも入社以来北陸電力の原子力部門に従事している原発の専門家です。 そのことは、毎年の株主総会に向けて北陸電力が全株主に発行する『招集ご通知』に明記されています。さらに、株主総会で私達株主が原発問題で質問すると、金井・石黒被告が必ず答弁しました。彼ら以前にも、志賀原発所長経験者の西野彰純氏や若宮真自氏などをはじめ志賀原発出身者や本店原子力部長出身者が、毎年複数名が取締役に在籍していたのを、私は株主総会に毎年出席して知っています。
しかし、被告側代理人が裁判所に対して事実に反する陳述をして金井・石黒被告ら及び歴代取締役の原発の専門家としての実績や人格まで否定した姿を見て、北陸電力そのものが冒涜されたように思い、株主の一人として被告らや北陸電力が気の毒に思えました。
≪志賀原発は航空機墜落やテロ・軍事攻撃の標的になるリスク≫
2013年の北陸電力第89回株主総会で私は、志賀原発へのF15戦闘機の墜落に対する建屋の強度について質問しました。また、2016年の第92回株主総会では別の株主が、志賀原発は軍事攻撃の目標にならないか質問しましたが、回答は不十分でした。
今年に入り、小松基地所属のF15戦闘機が小松沖に墜落しました。また、ウクライナに侵攻したロシア軍がチェルノブイリ原発などを攻撃して占拠するという事態が起きました。株主総会で指摘した通り、志賀原発にもこのようなリスクがあることは明らかです。
≪裁判所にお願いすること≫
戦争や原発は止めることができますが、地震は止められません。日本は火山列島、地震列島です。志賀原発は原子炉建屋直下に活断層との原子力規制委員会の専門家会合の評価書が全会一致で提出され、また、原発の東側、北側、西側それぞれ数kmに活断層があります。さらに、ここ1~2年能登半島では地震が頻発しています。
前回の第9回口頭弁論で原発の経済性分析での第一人者の龍谷大学の大島堅一教授が、「志賀原発に経済合理性は全くない」との意見書が提出されました。北陸電力や政府が発表した数値をもとに検証・分析されたもので、北陸電力の株主として会社の経営方針を冷静に検討するためには、このような客観的な検証・分析は極めて重要だと考えます。
経済性もなく、一方で様々なリスクを抱え、私たちや子ども達の命を脅かして作られる命がけの電気はいりません。裁判所におかれましては、私たちや子ども達が安心して平和的に暮らせる権利を守って頂きますよう、志賀原発運転差止めにつながる賢明な判決をお願い致します。
<視点・論点>
ウクライナをくり返すな!
超大国の「火遊び」がロシア&NATOの戦争に
『命のネット通信』前号では、ロシアのウクライナ侵攻について、スペースの関係上《編集後記》でふれる形になった。そこで訴えた「3つの教訓」―とくに3番目の<NATOの東方拡大という無謀な火遊びが戦争の火種に>は大事な論点だと思うので、ここで重ねて掲載した。
◆ロシアのウクライナ侵攻―3つの教訓
①真っ先にロシア軍の制圧対象となったのが、チェルノブイリ原発とウクライナ最大のザポロジエ原発である。よくぞ重大事故に繋がらずにすんだものだと思う。いずれにせよ、もし戦争が起きれば原発は何よりも物騒な代物であることが示されたのである。原発を攻撃するとは!と欧米各国は非難するが、原発が戦時の重要な戦略焦点になるのは、「常識」で分かることではないか。
②第二に、核保有の有効性を主張する「核抑止論」は完全に破たんしたことである。核保有国が決意して軍事力を行使すれば、他のどの国も核戦争を恐れてそれを止めることができない。日本政府は直ちに核廃絶条約推進に転換すべきである。
③第三に、NATOなど軍事同盟が時代遅れも甚だしいものであり、却って戦争の火種になるということである。いま欧米諸国(いわゆる国際社会)はロシア悪者論で久方ぶりに結束している。しかし、冷戦時代の悪しき遺産=NATOをどんどん東に(ロシアの周りに)拡大しようとして、結果としては「窮鼠猫をかむ」事態となった。これまで反ロシアでも、冷静な外交政策を堅持してきたスエーデンやフィンランドにこそ学ぶべきである。<通信№66『編集後記』より>
◆超大国アメリカによるNATO東方拡大という火遊び
侵攻以来3カ月以上が過ぎた。欧米諸国やメディアは「プーチン=悪者論」で終始しているが、この戦争は3カ月前に突然始まったのではない。
アメリカの空軍士官で現在シカゴ大学教授のミアシャイマー氏やフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏が指摘しているように、「米欧は『ウクライナのNATO入りは絶対に許さない』というロシアの警告を(反撃せぬとタカをくくり)無視してきた」「米英はロシアの侵攻が始まる前から、ウクライナへ大量の高性能兵器と軍事顧問団を送り込み、『武装化』を促していた」(4.18毎日「ウクライナ~別の視点」)
ミアシャイマー氏は、決定的な分岐点は2008年4月、ブカレストでのNATO首脳会議であり、当時のブッシュ米大統領はロシアを刺激することを心配したメルケル独首相やサルコジ仏大統領の反対を押し切り加盟歓迎の首脳宣言を行ったと指摘している。4カ月後、ロシアはジョージアに侵攻し、2014年2月にはクリミア半島を併合する。ロシアとNATOの戦争は、この時からすでに始まっていたのである。
また、中国批判の論客・遠藤誉氏も「ウクライナは本来、中立を目指していた。それを崩したのは09年当時のバイデン副大統領だ。『ウクライナがNATOに加盟すれば、アメリカは強くウクライナを支持する』と甘い罠をしかけ」(4.18毎日)た。バイデン副大統領は2013年の「マイダン革命」時にも反政府派を強力に支援し、事実上のNATO加盟国化を推進した。大統領就任以前からバイデンのNATO東方拡大路線は一貫したものだったのである。アゾフ大隊の強大化はその副産物だ。(*プーチンの反ナチ論は全く一方的な主張であるが、アゾフ大隊が極右でありナチのシンボルを常用していたことは良く知られている。マリウポリ攻防戦で、彼らは多数の市民を道連れにして地下要塞に立てこもった)
◆事実上のNATO加盟国化だけが進んだ!
ロシア=悪者論の一方でウクライナ=善&正義論があふれている。しかし、私は「ウクライナを繰り返すな!」と標題をつけたように、これだけ悲惨な戦争を引き寄せてしまったウクライナの政治に目を塞いではならないと思う。第一に、ウクライナが破たんした国家だということである。1993年独立時の人口5146万人が2020年では、4373万人。15%も減少し、毎年0.5~0.6%減、世界で最も人口減少の激しい国の一つである。
少子化だけでなく高学歴・若年層の社会的流出が大きな要因である。東部地域との対立もあり、政治的・国家的統一が進まなかったことも大きい。超大国アメリカの火遊びに同調し、ロシアとの対立を激化させる時ではなかったはずである。しかし、ゼレンスキー大統領はNATO加盟に加え核兵器再保有、「ミンスク合意」破棄まで主張するようになった。
当たり前のことだが、EUだって甘くはない。NATO加盟は歓迎だが、EU加盟には高い壁があった。EUもギリシャや南欧諸国の面倒を見るだけで手いっぱいである。進んだのは軍事面でのNATO加盟国化である。その陰で高学歴の若年労働力がドイツなどに流出し、人口減と国家・社会の弱体化が進んだ。ミンスク合意破棄は独仏の和平努力を無にするものだった。
第二にウクライナは、チェルノブイリ事故後も原発を推進してきた。原発依存度53.9%は世界3位。2位のスロバキアは500万人台の国なので、フランスに次ぐ実質2位といって良い。心配した通り、原発は戦時の重要な攻撃対象になってしまった。しかも戦時下なのに原発を停止しなかったのである。脱原発をめざす者として共感できるものではない。
◆身捨つるほどの祖国はありや-属国日本の直視を!
超大国の火遊びに付き合っていたら悲惨な結果になる。テレビ、新聞はウクライナの惨禍を連日報道している。しかし、あの正義なきイラク戦争では11万人ものイラク国民が米軍の空爆と市街戦で殺された。ソ連崩壊後、アメリカは一極支配の覇権体制を維持するために、弱小国を相手にした演劇的戦争によって、その力を誇示してきた。結末は歴然としている。
アフガンでタリバンは復活し、イラクは曲がりなりにも存在した国家体制が崩壊したことで、一時はIS(イスラム国家)に乗っ取られそうになった。本土を太平洋と大西洋で隔てられ、アジアやヨーロッパの戦争の惨禍を受けずにすんだ超大国が、真剣に他国民の命や被害を考えることはない。米軍兵士の死者数を心配するだけである。今回は派兵もなしで、戦争ビジネスの巨大な実験場、かせぎ場となっている。
「日本防衛のためGDP2%への軍備強化」が叫ばれる。しかし、今ですら日本の米軍基地への負担額は同盟国全体の半分以上。ドイツの3倍、イギリスの20倍、NATOの1.6倍である。まるでアメリカの軍事植民地であり、この倍数はアメリカへの従属度を見事に示している。世界からバカにされても仕方がない。「身捨つるほどの祖国はありや」―ウクライナ以下の日本の現実を改めず、これ以上アメリカの火遊びに追随しようというのだろうか。
ロシアの敗北とプーチン時代の終わりの始まりは明白である。無謀なロシア軍の侵攻は、破綻した国家だったウクライナに、「祖国愛」を甦らせてしまったからである。ウクライナをくり返さず、独立と不戦をめざす「平和の祖国愛」が今こそ求められている。編集後記でもふれたが、大変厳しい中でも、ドイツの現実を直視する姿勢は見習うべきであろう。 <タナカ記>
<NATO東方拡大の経過>
1999年―第1次拡大(ポーランド、チェコ、ハンガリー)
2004年―第2次拡大(バルト3国、 ブルガリア、スロベニア、ルーマニア、スロバキア) 2008年4月 ルーマニアのブカレストでNATO首脳会議。首脳宣言では「ウクライナ、ジョージアの加盟希望を歓迎し、両国が将来的にNATOの一員になることに同意する」と宣言
2008年8月 ロシア軍、ジョージアに侵攻
2014年2月 ロシア、クリミア半島を併合
<編集後記>
●現実を直視するドイツの動きに学ぼう!
ドイツでも昨年末に発足したばかりの中道左派政権(赤黄緑の連立)の政策の要となる「エコロジー産業社会」がピンチとなるのではと危惧されている。ロシアへの経済制裁で天然ガスと石油輸入の停止に直面。経済・気候大臣は中東を飛び回り、LNG貯蔵ターミナルを急ぎ建設する事態となっているからだ。
●「ところが、この事態がかえって新政権の再生エネルギー促進政策の推進と緑の党への追い風となっている。5月に行われた二つの州議会選挙で緑の党が躍進し、特に次期連邦議会選挙の前哨戦とされるドイツで最大の人口と産業を抱えるノルドライン・ウエストファーレン州では、得票率を一挙に3倍近く増やし、18%を超えて独り勝ちを果たした。これらの州では、連立交渉後に、いずれも第1党のキリスト教民主同盟との黒緑連立政権成立が確実視されている。」
●「つまりドイツ社会では、持続可能で温暖化に対処するエコロジー産業社会へ向けた政策の実現なしには、根本的な危機対処は不可能であるとの認識が保革を問わず定着し、EU全体へのインパクトも決定的になりつつある。戦争がもたらしたパラドックスと言えよう。危機は希望の芽もはらむものだ。」(『はんげんぱつ新聞』6月号―梶村太一郎、在ベルリン)
●同じ第二次大戦の敗戦国でも日本とは大違い。現実直視するドイツに学ぼう!<タナカ記>
<NO.67 2022年4月15日発行>
小児甲状腺がん患者6人 東電提訴へ!
当時6~16歳
10年間の沈黙を破って!
3・11から10年間。声を上げることができなかった福島県の小児甲状腺ガン患者が東京電力を訴える裁判にいよいよ立上がります。原告は事故当時6才から16才だった男女6人。進学や就職といった人生の大切な時期に、手術や治療を経験し苦労を重ねています。命のネット会員の皆さん!友人の皆さん!原発事故の被害を受けた子どもや若者が未来を向いて過ごすことができるよう、一緒に応援しましょう。
「事故時に福島県内に住んでいた17~27歳の男女6人が27日、東電に慰謝料など計6億1600万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。事故当時6~16才だった6人は、福島県内や東京都、神奈川県に住む高校生やアルバイト、会社員。10代で甲状腺がんになり2人が片肺を切除、4人が再発で全摘出し、肺に転移し
た人もいる。手術や治療で大学や仕事を辞めたり、日常生活が制限されて再発への不安をかかえたりしている。」(1.28東京新聞)
「原告の20代女性は同日、都内で記者会見し『差別を受けるのではないかと恐れ、誰にも言えず10年間を過ごしてきた。この状況を変えたい』と提訴の理由を語った。」(1.28福島民友)
▼志賀原発差止めを命じた井戸謙一さんが弁護団長に
水俣病など過去の公害訴訟では、加害企業が病気と因果関係がないと立証できなければ賠償責任を負うとした判例があり、弁護団はこの事故にも当てはまるとしています。
奇しくも弁護団長は、志賀原発運転差し止めを命じた井戸謙一さん。<左写真、左下写真・中央>定年退官後は各地の原発訴訟に精力的にとりくんでおられます。すでに「3.11子ども甲状腺裁判」支援ネットワークが結成され、活動を始めています。
重ねて応援を訴えます。
カンパ送り先
●郵便振替 記号11380番号11579501 名義3.11甲状腺がん子ども支援ネットワーク●
原告側、大島教授の「見解」を証拠提出!
富山訴訟第9回口頭弁論に多数が結集
志賀原発株主差止め訴訟の第9回口頭弁論が3月16日、富山地裁1号法廷で行われました。コロナ感染拡大の中、富山・石川県内から原告と支援者など多数の皆さんが富山地裁に駆け付けていただき、心より感謝申し上げます。
今回の弁論は、被告側弁護士が金井・石黒被告を含め北陸電力の取締役は「原発の専門家ではない」と事実に反する弁明を繰り返し、それに対して原告側弁護団が熱く鋭い発言を繰り出し、法廷内は熱気に包まれた1時間15分の弁論でした。次回の第10回口頭弁論では、裁判所から今後の裁判について、何らかの方向性が示される見込みです。
《原告弁護団 第20~21準備書面を提出し、要約陳述も》
今回、原告弁護団は第20~21準備書面を提出し、要約陳述しました。
◎第20準備書面 「再度の求釈明の申立て」
原告側はこれまでに、志賀原発再稼働方針や株主総会で株主提案に反対する方針を、取締役会でどのような議論検討のうえ決定したのか、また志賀原発の安全性やコストなどをどのように検討したのかなど、多くの項目で求釈明を申立ててきましたが、被告側はほとんど回答しないままです。そこで、取締役会議事録など再度の求釈明を申し立てたものです。
◎第21準備書面 「新規制基準の不合理性」
被告側は、志賀原発は原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に適合すれば再稼働するので、法令・定款に違反しないと主張しています。また、安倍晋三元首相は新規制基準を「世界で最も厳しい水準の安全規制」と評したが、原子力規制委員会の田中委員長は「規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない」と述べています。この新規制基準の内容が不合理・不十分であり、安全性が担保されるものではなく、適合性審査への対応では善管注意義務を果たしたことにならないと具体的に述べています。
《原告側、大島堅一教授の「志賀原発の経済性に関する見解」を提出》
原発の経済性に関して第一人者の大島堅一・龍谷大学政策学部教授が、志賀原発の経済性について、政府や北陸電力が発表した数値をもとに検証・分析し、35ページの意見書を作成され、原告側の書証「甲第110号証」として裁判所に提出。北電は「原発は経済性に優れている」と再稼働を進めようとしていますが、大島教授は、「北陸電力が原子力発電を維持する経済合理性は全くない。」と断言しています。
「むしろ懸念されるのは、経済性がない原子力発電所を、少しでも損のないようにしようとするあまり、安全性を軽視し、事故やトラブルがあってもこれを隠蔽し、さらには事故に至る可能性が否定できない」「このことは、北陸電力に限っては抽象的可能性ではない」「なぜなら、1999年に臨界事故という深刻な事態に陥ったにもかかわらず、この事実を隠蔽し続けたという過去がある」「経済性がない原発を維持し続けることは安全性の面でも大いに懸念される」と結論付けられています。
素晴らしい内容です。今回提出の準備書面や大島教授意見書は、「志賀原発を廃炉に!訴訟原告団」のホームページの裁判資料(富山訴訟)に掲載されているので、ぜひご一読下さい。
◆第10回口頭弁論にぜひご参集を⇒6月15日(水)午後3時~、1号法廷◆
第22回総会&「七尾と戦争」出版記念会を開催
3.11フクシマから11年。命のネットも22年目を迎えます。この間、コロナ禍によりひっそくを強いられる一方、多くの方の逝去や病気療養という事態もあり、日常活動でも様々な困難を抱えてきました。
しかし、久方ぶりに顔を合せ、志賀原発廃炉への思いを固めることができました。またロシアによるウクライナ侵攻の暴挙は、奇しくも原発が戦時にあってはどれほど物騒な設備となるかを如実に示しています。<編集後記参照>脱原発・廃炉の運動はさらに必要です。
◆ヨウ素剤配布、団結小屋の維持・活動交流・富山訴訟を軸に!
総会はまず、21年の活動と会計決算報告を承認。その上で役員体制の困難(盛田代表の逝去、事務局長の役員病気療養など)による活動力低下はやむをえないが、
①団結小屋は全国でも珍しい式と直近にあり、反対運動のシンボル・活動交流の拠点となってきた。小屋の維持・管理だけでも命のネットは約100万円をこす財政負担をしています。
②また、富山訴訟(北電株主による志賀原発差止め訴訟)に対し現地30㌔圏の参加・連帯を示していくことも不可決だ。力量低下を直視しつつもヨウ素剤の配布、団結小屋の保持と活用、富山訴訟への参加を軸に活動継続を!という真剣な声が参加者から寄せられました。
総会と併せ『七尾と戦争』出版記念会も行われました。同書の出版は2月25日の北国新聞、北陸中日新聞など各種報道で大きく取り上げられましたが、著者の角三外弘さんは命のネットの会員・役員でもあります。七尾港・中国人強制連行や28人の住民が亡くなった第2能登丸の触雷・遭難事件など、地域と戦争の関わりの記録にとりくんでこられた角三さんの活動を改めてお聞きし、その出版をみんなで記念する集いともなりました。
●角三外弘(かくみ・そとひろ)さん紹介―1945年9月、七尾市生まれ。69年~2006年、七尾市内の小学校に勤務。その間、県教組・同支部役員も務める傍ら『七尾港 中国人強制連行の記録』を自費出版。今年2月には、28人の住民が亡くなった第2能登丸の触雷・沈没事件なども含め、地域と戦争の関わりを記録した『七尾と戦争』を自費出版。
●中国人強制連行―太平洋戦争、中国人4万人が連行され、日本各地の鉱山・港湾などで働かされ、約7千人が死亡。七尾港には399人。うち15人が死亡、64人が失明。
◆各地のたより◆
台湾公民投票-脱原発へ前進
野党の「第4原発稼働」提案を否決!
年末に嬉しいニュースが入った。
12月18日に台湾で野党・国民党系団体の提議による公民投票(国民投票)が行なわれ、すべての提案で蔡英文政権の政策が支持された。その1つが第4原発(龍門原発)の稼動を求める提案で、賛成380万票、反対426万票で否決された。
この公民投票については日本のマスメディアでも報じられたが、不可解なことに第4原発の案件については殆ど或いは全く取り上げられなかった。台湾では第1原発(金山)、第2原発(国聖)、第3原発(馬鞍)に各2基の原発が稼働していたが、第1原発の2基と第2原発の1基はすでに運転期間40年に達して稼働が終了している。
第4原発については、計画公表時から地元・貢寮郷を中心に激しい反対運動が繰り広げられ、結局2014年6月に国民党・馬英九政権がほぼ完成していた第4原発の稼動と工事の凍結を発表し、反原発を掲げて16年に成立した蔡英文政権はその方針を継承していた。2020年末に建設許可期限が過ぎてしまっていたので、仮に今回の公民投票で稼働提案が可決されても、実際に稼働することは困難な状況だった。とはいえ、そうなっておれば原発推進派は勢いづいていただろう。
蔡英文政権は、2025年までに残りの3基を稼働終了させて脱原発を実現する方針である。そうなればアジアで初めての脱原発になる。今回の結果はこの方針の実行への追い風になるだろう。同政権は2025年脱原発の先に、2050年までのカーボンニュートラルも掲げている。これらの革新的なエネルギー政策の軸になるのが、再エネ利用(とりわけ太陽光と洋上風力)とディマンドレスポンス(価格メカニズムなどを活用した需要制御)である。
第4原発の原子炉は日本製である。歴代日本政府は原子炉輸出に積極的だった。しかし失敗の連続で、唯一成功したのがこの台湾への輸出だった。それが完成も稼働もしないことになりそうなのである。(愛知県豊橋市・田中良明)*注⇒『原発雑考』402号より転載。台湾海峡の危機が叫ばれるが、台湾のリベラル政権が脱原発を柱にしていることは黙殺するのが日本の現状。ぜひ注目してほしいと思い転載した。
甲状腺ガンは300人に-それでも被曝と関係ない!
昨年11月、長野県原水禁松本協議会の皆さんが来福され現地視察に同行した時、生け垣や庭木に山茶花が沢山咲いているのを見てきました。避難解除になっても人気のない庭先に赤い花をつけ、トラックの通る道筋に粉塵をかぶり、生け垣にひっそり咲いている様子に物悲しさを憶えました。
脱原発情報は今回240号となりました。この1年をふり返ってみると、多難な廃炉収束を様々な角度から現状報告と問題提起をしてきました。故障続きのアルプス多核種除去施設問題(注⇒国と東電はこの設備で汚染水の放射能は減殺されるから大丈夫と主張)は、汚染水海洋投棄問題と深いかかわりを持ち、地震大国日本に原発を建設した愚かさを問い、東電交渉では被ばく労働や東電の隠ぺい体質を質してきました。
<甲状腺がん検討委座長が、自民党から参院選出馬>
低線量被曝と小児甲状腺がん問題では、県民健康調査で見つかった小児甲状腺のガン又は疑いは昨年6月現在で266名(ガン確定者221名)、県が把握していない患者がほかに約30名以上おられることが分かっています。県は甲状腺がん患者の実態を調べようとしていません。検討委員会は初期段階から「福島で起きている小児甲状腺ガンは被曝との因果関係は考えにくい」と結論づけてきました。その検討委員会の座長である星北斗氏(県医師会副会長)が夏に行われる参院選福島県選挙区に自民党公認で出馬するというニュ-スには驚かされました。
被ばくの影響を検討する委員会の座長が在職中に自民党という特定の政党から出馬することは、検討委員会自体が政治的な要素を含み、中立とはとても言えなかった。座長は「被ばくとの関連を否定」し、意見が分かれれば「私に一任を」と丁寧な議論をさせず、幕引きをしてきました。彼が意識してきたのは政府や県庁であり、県民の方を向いてこなかったことが明らかになったと思います。夏の参院選で勝ち抜くことと争点を明確にすることで希望の年となることを願っています。<双葉地方原発反対同盟・千葉親子(ちば・ちかこ)さん>
自然破壊のメガソーラーを止めた!―署名ご協力に感謝
故郷の森を破壊するメガソーラーに反対する沢山の賛同署名有難うございました。こちらでは知事あての署名と村長宛ての署名を集めておりまして、村長宛ての方は我々『山添村「森は命」の会』が担当しております。みなさまのご協力のお蔭で、12月6日の村議会でにおいて、村長はハッキリと反対を表明して下さいました。よって署名活動は打ち切りとなりました。
頂いた署名は有効に使わせていただきます。遠方からの応援に村長もきっと喜んでもらえると定義する人が油断できません。そちらも風力発電廃止、脱原発がんばって下さい。本当にありがとうございました。<奈良県山添村「森は命」の会 共同代表・神先智子>
<編集後記>
● 年賀状から コロナ禍と体調の不良のため丹後の弟妹や関西、東京方面の親戚とも顔を合わせていない。そんな中、賀状の交換は近況を確かめ合う貴重な機会である。東京の親戚の便りの中に、こんな一節があった。
「フクシマのメルトダウンから10年。未だ原発の将来像すらきちんと描けないなか・・小型原発の開発がカーボンゼロの名のもとにまかり通っているようです。混沌とした世界はさらに迷いを深め、どこへ行くのでしょうか? 先日、目にした「脱成長!」(*『人新世の資本論』の著者・斎藤幸平氏)私自身が思っていたことをきちんと学問的に提議する人が出てきていることにほんのわずかですが光を見た思いです」―ちなみに彼は東京電力の元社員です。
●ロシアのウクライナ侵攻―3つの教訓 ①真っ先にロシア軍の制圧対象となったのが、チェルノブイリ原発とウクライナ最大のザポロジエ原発である。よくぞ重大事故に繋がらずにすんだものだと思う。いずれにせよ、もし戦争が起きれば原発は何よりも物騒な代物であることが事実で示されたのである。原発を攻撃するとは!と欧米各国は非難するが、原発が戦時の重要な戦略焦点になるのは、「常識」で分かることではないか。
②第二に、核保有の有効性を主張する「核抑止論」は完全に破たんしたことである。核保有国が決意して軍事力を行使すれば、他のどの国も核戦争を恐れてそれを止めることができない。日本政府は直ちに核廃絶条約推進に転換すべきである。
③第三に、NATOなど軍事同盟が時代遅れも甚だしいものであり、却って戦争の火種になるということである。いま欧米諸国(いわゆる国際社会)はロシア悪者論で久方ぶりに結束している。しかし、冷戦時代の悪しき遺産=NATOをどんどん東に(ロシアの周りに)拡大しようとして、結果としては「窮鼠猫をかむ」事態となった。これまで反ロシアでも、冷静な外交政策を堅持してきたスエーデンやフィンランドにこそ学ぶべきである。
●プーチンのロシアは暴挙のツケを払わねばならない プーチン時代の終わりの始まりである。周辺国と「仲良く」できぬ国に未來はない。嫌韓・嫌中の日本にも未来はないと知るべきである。アメリカは十字軍きどりのアフガン・イラク戦争で泥沼に陥り、気がつけば中国が台頭していた。今回の戦争はさらに中国に利となるだろう。しかし、中国はしょせん大陸国だ。アラビア・東アフリカまで鄭和の大艦隊を7回も送り出したのは6百年昔の話である。本気でアメリカとシーパワーを争おうとするなら、やはり痛いツケを払わされるだろう。<タナカ記>
22年度会費納入のお願い!
コロナ禍に抗して定期総会を4月10日に開催し、21年度決算報告は承認されました。みなさまのご協力により、富山訴訟、ヨウ素剤の更新、団結小屋補修など多くの出費がありましたが、それに対応する会費納入やカンパにより21年度も何とか乗り切ることができました。心から感謝いたします。
昨年の運動を引き継ぎ、志賀原発の再稼働阻止・脱原発社会実現へ活動をすすめることが必要です。このためにも22年度会費の早期納入を富山訴訟への支援をふくめ、ぜひともよろしくお願いいたします。
◆納入済の方には振込み用紙を入れておりません。◆会費は原子力立地給付金の出ている地域を除き、年2,000円です。◆労金の自動振り込み払いの方を除き、下記のいずれかへ振り込み下さい。
◎郵便振込口座 00790-6-19989 命のネットワーク
◎北陸労働金庫七尾支店 普通預金口座 3778449 命のネットワーク
<NO.66 2022年1月15日発行>
和田廣治原告団長が意見陳述!
逃げる北電に対し地裁の積極姿勢求める
富山訴訟第8回口頭弁論は12月13日、富山地裁で行われました(松井洋裁判長)。冒頭に、富山市の和田廣治・原告団長(富山市)が意見陳述を行いました。第1回弁論での多名賀哲也(羽咋市)以後、小嵐喜知雄さん(高岡市)、川原登喜のさん(富山入善町)、滝口保さん(羽咋市)、林秀樹さん(金沢市)、清水哲男さん(富山市)、和田美智子さん(富山市)と今回の和田団長で、原告8名全員が意見陳述を行うことができました。<後述参照>
◆第18,19準備書面で、石川・富山の避難計画を指摘!
今回、原告側弁護団は第18、19準備書面を提出しました。
◎第18準備書面⇒「SPEEDIによる放射性物質拡散予測
◎第19準備書面⇒「避難計画の策定状況及びその概要」
いずれもわずか2カ月弱で弁護団ががんばって作成した書面で、とても良くできています。特に第19準備書面は、避難計画問題で石川県・富山県の各自治体に調査した結果をもとに、志賀原発に関しては、東海第2原発差止めを認めた水戸地裁判決が深層防護の第5の防護レベルの達成要件として挙げているような避難計画とは程遠いもので、志賀原発の安全性は到底認められないと指摘しています。<「志賀原発を廃炉に!訴訟原告団」のHP参照>
被告・北電側の弁護団は「意見書」を提出し、①再稼動方針は株主総会の圧倒的多数で支持された、②規制委審査をふまえて再稼動の可否を決める、③本訴訟は北電に負担を強いている、と主張。私たちが提出した準備書面への反論や求釈明申立ても拒否し、つまり逃げているだけで反論も釈明もしませんでした。
これに対して原告側は鋭く「イタイイタイ訴訟(1971年6月、富山地裁で原告勝訴判決)では、こんないい加減な対応ではなかった。きちんとした訴訟指揮を求める」と追及し、その結果やっと、「松井裁判長は北電に、原告の主張に対する考えを準備書面で明らかにするよう求め」(12.14北日本新聞)ました。「その北電側の主張を見たうえで今後の進行を考えたい」というのが松井裁判長の対応です。次回弁論をぜひご注目下さい。
◎第9回、第10回口頭弁論にもぜひご参集下さい!
◆第9回口頭弁論 3月16日(月)午後3時~ *いずれも
◆第10回口頭弁論 6月16日(水)午後3時~ 1号法廷
規制委が敷地内断層と福浦断層を現地調査
「断層上の原発立地」という狂気、いつまで続けるのか?
昨年11月18日、原子力規制委員会は志賀原発2号機の審査会合で焦点となっている敷地内断層の活動性を確かめる現地調査を行いました。敷地内断層で陸地の6本(S-1~8)と海岸部の4本(K-2,3,14,18)です<図と写真参照⇒11.19北陸中日>。
翌19日は原発から東約1キロにある福浦断層を調査しています。
断層10本はいずれも重要施設にかかっており、どれか1本でも活断層と判断されれば再稼動できません。しかし、規制委の石渡明委員(地質学)は調査後の会見で「北電の主張には納得できる部分とイマイチだなという部分があった」と述べ、北電に望みなきにしもあらず、のような態度を示しています。
保安院(現・規制委)が1号機直下のS-1断層の活動性を指摘したのが10年前の12年7月。北電が再稼動の審査を申請したのが翌年です。いつまで廃炉の結論を引き延ばすのでしょうか。断層の活動性については、07年3月の能登半島地震で門前沖の除外していた断層が連動して動き、過小評価が明らかになりました。
続いて7月に起きた中越沖地震では柏﨑刈羽原発の直下断層が動き、あわや原発震災!というほどのダメージを受けました。原発だけが火災を起こし、原発施設のモロサも明らかになっています。<関連記事必読>
そもそも地震大国の日本に、しかも断層だらけの所に原発を立地するというのは狂気の沙汰です。北電も規制委員会も「志賀原発廃炉」の決断を直ちに行うべきです。
老朽原発廃炉!大阪集会に1600名が参加!
冬晴れの12月5日、関電本社に間近いうつぼ公園での集会には、近畿各府県や全国各地から1600名が集まり、若狭現地からの報告や各地の発言が続いた。集会は最後に、実行委員会の木原壮林代表が「このあつまりを全原発廃炉の突破口にし、原発のない社会をひらいていこう!」という力強い決意表明でしめくくられた。
集会後は御堂筋の大通りを北から南へと行進し、美浜3号機や高浜1,2号機等の再稼動の動きに対して『老朽原発 このまま廃炉!危険なプルサーマルはやめよ!』と声を上げ続けた。私も命のネットの旗を高く掲げながら難波駅前まで歩き続けた。大阪での集会・デモには、ここ数年ほぼ欠かさず参加してきたが、隊列の中で声を張り上げていても、以前のように隣りに盛田さんや滝口さんの姿がないのが、何とも淋しく感じられて仕方がなかった。(藤岡彰弘・記)
富山訴訟第8回口頭弁論意見陳述
原 告 和田 廣治
原告の和田廣治です。はじめに原告団長として、裁判所には原告8名全員に意見陳述の機会を認めていただき、本訴訟提訴に至った原告一人一人の思いなどについて、生の声を聞いていただいたことに感謝いたします。
私は2013年3月に富山県職員を定年退職し、現在は年金生活者です。在職中は福祉専門職として、児童相談所の児童福祉司や児童自立支援施設などの指導員を歴任しました。子供達の命と人権を守るとともに、人生を誤らないよう導くことにも日夜務めました。
≪志賀原子力発電所問題に関わった経過について≫
1979年3月に米国スリーマイル島原発で炉心溶融事故が発生し、原発は安全だと思っていた私は驚きました。北陸電力が志賀町に原発建設を計画していることも知りました。
その頃に読んだ書籍では、「冷却材喪失」「全電源喪失」「ジルコニウム合金製の燃料棒と水の反応による水素発生と爆発」「緊急炉心冷却装置(ECCS)の作動不能」「炉心溶融」等々、高木仁三郎さん(核化学)や水戸巌さん(放射線物理学)など多数の学者が原発の技術的な危険性を40年前にすでに明確に指摘していました。原発推進派の学者達は「非科学的だ。原発は安全だ。」と批判しましたが、2011年3月の福島原発事故では、それらが全て実際に起きました。
≪市民の質問や申し入れを玄関払いで拒否を繰り返した北陸電力≫
1980年代に入り、私は富山の市民有志で、志賀原発への市民の素朴な疑問を聞いてもらい教えてもらうおうと北陸電力本店に何度も申し入れに行きましたが、そのたびに「説明する必要はない」と拒否され、玄関のドアを閉められる事が続きました。
1986年4月のチェルノブイリ原発事故では、数千kmに及ぶ広範囲な放射能汚染で事故収束作業に従事した労働者・消防士・軍人など数千人が死亡し、子供達も甲状腺がんや多くの病気が多発して死亡するなど、原発の危険性が明らかになりました。しかし北陸電力は頑なな姿勢を続け、1988年12月に志賀原発1号機の建設工事を強行しました。
≪1990年から北陸電力株主総会に参加≫
株主総会は、私達一般市民が志賀原発中止の声を会社経営陣に直接届ける唯一の機会です。私は1990年に北陸電力の株主となり、その年の定時株主総会に初めて参加しました。以後、ほとんどの株主総会に出席しています。
はじめの数年間は、私達が発言を求めて挙手をしたり、議長の指名で発言席に立っただけで、多数の株主から暴力的な野次と罵声が機関銃のごとく浴びせられました。私達の質問の声はかき消され、身の危険さえ感じました。そして、議長である北陸電力会長は、そのヤジを制止せず、立ち往生した株主に発言を催促するだけでした。
そこで、数年たった株主総会で、私は発言の中で議長に対して、「多数のヤジで株主の質問権が妨害され、議長も静止しないので、株主総会決議無効の提訴も含めて検討する」と付言しました。すると、翌年の株主総会からは、あの暴風のようなヤジがピタッと止みました。きわめて組織的対応だったことが、とてもよくわかりました。
その後は会場のヤジは減ったものの、株主の質問に対する社長らの答弁は不十分でしたが、それは少数株主の限界として私はそれ以上の対応は考えませんでした。 しかし、2018年の株主総会では、従来の取締役の答弁とは大きく外れ、株主の質問に対して代表取締役副社長が揶揄するような不誠実で不適切答弁を繰り返しました。
≪本訴訟の提訴に至った経過について≫
福島原発事故で北陸に避難している株主が、「志賀原発で事故の場合に事故収束作業に当たる労働者の放射線被曝を心配する」と質問をしたところ、石黒伸彦副社長は従業員の放射線被曝について「無尽蔵ではなく、決められたもの(注:緊急作業時の国の被曝基準)で対応する」と答弁しました。志賀原発所長を歴任し現在は北陸電力原子力本部長である石黒副社長は、志賀原発で従業員らの放射線被曝で「無尽蔵」とは、従業員らがどんな事態になるのかを考えたうえで発言したのでしょうか。しかも、原発事故による放射能汚染で安住の地を奪われて北陸に避難している株主に対して、あまりに失礼で心無い発言です。
別の株主が、「志賀原発1号機は運転開始からすでに20年以上経過し、いずれ必ず廃炉にする必要がある。今から具体的な検討や調査研究を進めないと、安全な廃炉は実現できないのではないか。」と質問しました。原子炉の寿命が40年との国の基準が前提です。
それに対して石黒伸彦副社長は、「廃炉は現時点で考えていない。300年、500年続くわけでなく、いずれ廃炉にしなければならない。」と答弁しました。直後に株主の抗議であわてて「今でしたら40年。」と付け加えました。
いずれの答弁も、会社や従業員を思い真剣に質問した株主に対して、議長の指名で会社を代表した答弁です。議長は訂正もせず質疑を打ち切り、議案の採決を始めようとしました。そこで私は議長に対して、この答弁の訂正等を求めて発言を希望しましたが、議長は拒否して採決を強行して、議事を終了してしまいました。
私はこのような株主総会及び取締役は会社法の趣旨や社会の一員としての道を誤っており、北陸電力の経営の健全性も志賀原発の安全も危ういと考え、本訴訟を提訴しました。
≪今年の株主総会でも、取締役が回答拒否を連発≫
さて、本年6月25日に開催された第97回北陸電力株主総会では、会場での株主の質問は1人2分に制限され、株主の質問に対して取締役は、回答拒否や不十分な説明を繰り返しました。以下の質問への回答拒否は、今年の北陸電力の株主総会を象徴しています。
①株主:『2030長期ビジョン』の財務目標の志賀原発再稼働時期や稼働率の説明を。
取締役:財務目標は一定の前提で計算しているが、具体的回答は控える。
②株主:志賀2号機は全国の原発で最も稼働率が低く、4000億円以上の建設費は回収
できたのか。多額の安全対策工事費が回収できるのか。その場合、想定稼働率は?
取締役:採算性は十分にある。投資回収などは回答を控える。
いずれも議長の指名で常務取締役が答弁し、社長らは補足も修正もしませんでした。しかも、後日社長らが作成した会社の正式な議事録には、「回答を控える」という記載はありません。都合の悪いことを隠す姿勢と言えます。
『平成25年版原子力施設運転管理年報』(独立行政法人原子力安全基盤機構)によると、電力会社別設備利用率で北陸電力は、50,8%で全国最下位です。志賀原発2号機の設備利用率は35,3%で他社の原発の半分程度で最下位です。それを踏まえた経営問題での株主の質問にも、取締役は回答拒否を繰り返しました。議長は質問希望者を無視して質疑を打ち切り、議案を採決して総会を終了させました。その結果、1時間29分という全国9電力会社で北海道電力に次いで2番目の短かさでした、これが今年の北陸電力の株主総会の実際の姿です。
志賀原発1号機の臨界事故隠しが発覚した2007年の北陸電力株主総会で、3時間40分かかった総会の最後に筆頭株主の富山県が異例の発言をし、「公共性の強い事業者として、安全性確保・地域住民の信頼が不可欠であり、再発防止策の確実な実行及び地域住民に対する、わかりやすい十分な説明を強く求めたい」と発言しました。残念ながら現在の取締役らには、株主や県民への説明責任が求められていることの自覚は感じられません。
加えて金井豊被告は、社長当時の2020年1月23日に開催された原子力規制委員会第55回臨時会議「原子力規制委員会と北陸電力経営層による意見交換」で、「私としては、例えば、一般的にアンケートをとると6割は原子力反対です。」(原子力規制委員会作成の議事録より)と自ら発言しています。私達の主張は「原子力発電に反対する個人的な主義主張」ではなく、多数の県民の声でもあります。
≪裁判所にお願いすること≫
志賀原発の再稼働を認めると、もしも数十年の運転期間に地震等で大事故が起きれば、北陸地域が広範囲に放射能汚染され、私達やこれから生まれてくる全ての命が危険にさらされます。積雪時に事故が発生したら、私たち住民は避難することも困難になります。まして福祉施設では避難は不可能になります。仮に事故がなくても、志賀原発で発生する大量の放射性廃棄物を今後数百年、数千年、数万年にわたり、子々孫々に厳重管理を押し付け、そして生きとし生けるすべての命に、重大な危険性と膨大な費用を押し付けます。安全で美しい自然環境を未来の世代に引き継ぐことは、今を生きる私達大人の責任です。
被告らは『弁論更新にあたっての意見書』で、「経営方針が妥当でないと考える株主は、(中略)株式を売却することにより、リスクを回避することができる。」と述べています。私は、自己の利益のために志賀原発廃炉を求めているのではありません。私は北陸電力の株主として、会社や取締役が誤った認識や経営姿勢で志賀原発再稼働を進めていることに対して、その誤りを正すことにより、多くの県民の命と生活を守ると共に北陸電力の経営の健全化を図ることこそが、北陸電力の株主としての社会的責任であると考え、この訴訟に取り組んでいます。
裁判所におかれましては、今を生き、未来を生きる子供達や全ての命が救われるよう、志賀原発の運転差止めにつながる判決を一日も早く出されることを、心よりお願いいたします。
能登半島地震-3断層が連動!
―北電の過小評価が明らかにー
15年前の能登半島地震では輪島市門前沖の3つの断層が一体となって動き、甚大な被害を与えました。北電は、二つ目の断層は動かない。あとの二つは単独で動くから大した地震にはならない」と言っていたのです。<左の毎日新聞記事を参照>
海底の長い断層を小さく切って予想される地震を小さく評価する方法は東京電力や関西電力も使っています。中越沖地震で、東響電力は「海底断層を過小評価していた。03年から知っていた」と認めました。(07.12.6朝日など各紙)
今回、規制委が現地調査した福浦断層も同じです。計画段階から住民は「活断層だ」と指摘しましたが、北電は否定してきました。3.11後、最近になって活断層と認め、その距離も小出しに延長しています。
阪神淡路大震災でも多くの断層が連動して動き大きな被害が出ました。10本もの断層が集中する志賀原発は、もともと立地してはダメだったのです。<タナカ>
◆各地のたより◆
福島の津島とつながって
―紫金草合唱団・大門高子さんとの熱い3日間―
紫金草合唱団を立ち上げられた大門高子さんから、金沢である紫金草のコンサートの後に、能登の志田の染工房まで足を延ばしたい、との連絡をいただき11月中旬、初めてお会いすることができました。現在、福島の津島に通われ、みなさんの聞き取りを続けられているとのこと。志賀原発にも行きたいとのご希望で、最終日、団結小屋へもご案内できました。
大きな構想をあたためておられる前向きのご様子は、いのちや平和への尽きない思いを共に感じさせていただけた熱い3日間でした。後日に頂いたメールの抜粋です。
『私はいま日中の三部作として「紫金草物語」から「撫順戦犯管理所」をテーマにした「再生の大地」(11月30日コンサートです)そして三部作目として「3度の国策での棄民―満蒙開拓、戦後開拓、そして福島・津島の原発被害」を作品化しようと温めています。<中略>3日間いろいろお話して最後の日は志賀原発訴訟原告の志田弘子さんから団結小屋の中で一人で聞いたお話は(監視車が遠くから見張っていた?)まさに国策の棄民に負けない北陸の母親のお一人だと思いました。過去
現在 未来を生きる国策棄民に負けない作品の歌を作りたいと今福島にも通っています。歌できたら歌って下さいね』
大門さんから頂いたDVDは福島の津島の人々が、語りと共に、荒れ果て崩れ取り壊されてゆく家々の記録を残そうとしたものでした。国策の満蒙開拓団としての夢破れソ連軍に追われての苛酷な逃避行、言葉にできない苦労で戦後開拓を続けた津島の地を放射能で再び追われた人たちの、身を切られるような思い・・・。DVDをのとじょで観ました。皆、やり場のないため息をつきながら目を離せぬ映像でした。
その日に合わせて、福島へ帰られた石井いづみさんつながりで届いたどっさり重たい荷物は、津島に暮らしておられた友達のお母さんが、以前みんなの集まる時によく作られたというかぼちゃの蒸し饅頭でした。久しぶりで作られたお饅頭は綺麗な黄色の何ともおいしいお饅頭で、そのお気持ちが切なく、有難く、その思いをかみしめ、つなぐ私たちでありたいと深く思うことでした。(七尾市・志田弘子 記)*注⇒弘子さんは「のとじょ」のメンバーです。
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<編集後記>
軽々に「日米同盟」と言わんでくれ!
●昨年11月30日夕、米空軍三沢基地(青森県三沢市)に所属するF16戦闘機が同県深浦町に重さ210㌔もの燃料タンク2個を投棄し、青森空港に緊急着陸。米軍は岩木山近くに投棄したと釈明していたが、うち1個は民家の立ち並ぶ深浦町役場近くの国道上に落下していた。米軍は住民や自治体の飛行中止の要請も無視し飛行を再開した。「奇跡的に民家に落ちなかっただけ。運次第ってこと」-周辺住民の声だ。
●青森だけではない。大分県日出生台演習場では米海兵隊が自治体との覚書を無視して夜間実弾射撃訓練を続けている(昨年9.16毎日夕刊)。米軍基地で働く従業員がコロナ対策の消毒作業で労災被害にあっても拒否するなら解雇だと脅され、業務命令が頻発(昨年11.21毎日)。沖縄は、それが日常であり、辺野古はそれを拡大・新設する。政府は口を開けば「日米同盟を基本に」と言う。現場の実相を知って言っているのか?腹立たしさと虚しさを覚える。<タナカ記>
<NO.65 2021年10月15日発行>
能登の里山里海を守ろう!
9.12風力発電額集会 七尾の三林寛さんが講演
今、能登半島に総数180基以上におよぶ風力発電の設置が新たに計画されています。能登にはすでに70基を超える風力発電が動いているというのに、その上さらに大規模な新規事業が押し寄せてきたら、一体どうなってしまうのか? まさに、能登の里山と住民は大変な事態を迎えようとしています。
◆40数名が参加して
こうした中で、計画の発表当初から声を上げ続けてきた「能登の風力発電を考える会」の三林寛さんを迎えて、「能登女ネット」の協力のもと「命のネットワーク」主催、のとじょ賛同による学習会を9月12日に行いました。
コロナ禍の中でしたが、会場となった羽咋労働会館2階ホールには、中能登地区各市町の人を中心に金沢、富山市などからの参加者を含め40数名もの人々が集まりました。
三林寛さんは、医師として地域に根差した医療とはどのようなものかを問い続け、診療にあたるかたわら、七尾市田鶴浜の七原で、山間地を拓きさまざまな作物づくりに携わっています。その農地のすぐ近くで、風力発電計画の一つが強引に推し進められようとしているとのこと。
三林さんは用意してきた写真や画像を使って、風力発電の現状や建設に伴うさまざまな自然破壊の問題、低周波の発生による身体への深刻な影響などについてわかりやすく説明されました。最後に、三林さん夫婦は、畑で採れた大豆で豆腐を作っていて、その豆腐を介してさまざまな人々との交流が広がり、そういった中から風力発電への疑問の声が大きくなっていったのだと強調しました。
お話し終えた後の意見交換の場では、各市・町や石川県の取り組みの曖昧さが厳しく批判され、自治体の枠を超えた横の繋がりや、全国各地の反対運動に学び幅広い連帯を目指すことなど、積極的な意見や提言が次々と飛び出しました。(盛本芳久県議も参加され、関連する質問や意見に回
答や発言をいただきました。有難うございました)
◆原発は廃炉に!風力発電計画は白紙に!
原発も、風力発電も、住民を蚊帳の外に置いたまま勝手に進められてきたものです。すぐにでも原発は廃炉に、風力発電計画は白紙に戻させようと、参加者一同で思いを新たにし、学習会を終えました。
<追記>三林 寛さんから
●先日は風力発電事業についてお話しする機会を頂き、ありがとうございました。みなさまの質疑応答がとても高度でタジタジでしたが、とても頼もしく感じました。少しでも多くの方のご協力を頂いて、大きな声にしていくことが一番事業者へ訴える力になると考えております。多くの皆さまに風力発電についてよく知って頂き、里山里海を守りたいと思っていただくことで、準備段階で大きな波を作ることができれば、と考えています。
●今後、既設風車の騒音測定(9月25日、志賀町富来地区で実施)やホームページ整備(里山里海の魅力、風力発電事業の実態、反対活動をする人たちのストーリーをまとめたい)、マスコミと行政への働きかけ、反対の気持ちを持っている方々にお話しに行くといった活動を続けていきたいと思います。
今後も命のネットワークの皆さまと連携をとって原発反対も含めて活動できればと思います。
よろしくお願い申し上げます。 三林 寛 拝
富山の和田美智子さんが意見陳述!
関電・中電との60万kw契約も説明なし
富山訴訟第8回口頭弁論は9月29日、富山地裁で行われました(松井洋裁判長)。冒頭に、富山市の和田美智子さんが意見陳述を行いました。NPOの一員として富山市郊外で農作業に取り組み、夏には福島の子どもたちの保養を受け入れていること、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「原発いらない」と声を上げてきたこと、能登原発防災研究会で原子力防災の学習を重ねてきたことなどの活動を語った上で、福島原発事故への反省がなく、株主への説明責任も果たさない北電取締役の姿勢を厳しく批判しました。最後に、豊かな自然の恵みを奪い、人権を侵害するのが原発だと指摘し、一日も早く志賀原発の運転差止めにつながる判決を出すよう求めました。
◆巨大契約は関電の株主総会で明らかに!
続いて原告弁護団長の岩淵弁護士が、今回提出した第13準備書面「関電・中電との契約の終了」について、要約陳述しました。志賀2号機は、建設前の1996年に関西電力・中部電力と交わされた契約によって、最大出力135.8万Kwの約半分(60万Kw)を関電・中電に供給し、受電料金に加えて保守管理のコストの一部を負担してもらう「共同開発」の形態となっていました。この契約が今年3月で終了していたにもかかわらず、今年の株主総会で株主から質問されたにもかかわらず、北電経営陣は一切答えることはありませんでした。それが明らかにされたのは関電の株主総会でした。
中電・関電からの年間支払額は270億円程度と推定され、北電の経営(2020年の経常利益は123億円)に重大な影響を及ぼすことは明らかです。取締役らは株主総会で決められた事項を遂行することが取締役の義務と言いますが、株主の利益にかかわる重大な事項について何ら説明せず議決していたのです。また今回の件は、当初から過剰設備と指摘されていた2号機がやはり不要だということを改めて示すものです。岩淵弁護士は、株主への説明責任を果たさず、株主総会を形骸化させている被告取締役らを厳しく批判し、関電・中電との契約の実態や、株主総会で説明しなかった理由など5項目について釈明を求めました。これについて裁判長は、次回弁論で釈明の要否も含め回答するよう被告に求めました。
原稿弁護団はこのほか、前回裁判長から求められた志賀原発の重大事故の機序(メカニズム)について、第14「重大事故発生の機序・総論」、第15「基準地震動を超える地震に襲われる危険性」、第16「敷地内断層の危険性」、第17「避難計画について審理する必要性」の各準備書面を提出しました。次回までに、第18準備書面として避難計画の具体的問題点を指摘することとしています。
◎第8回、第9回口頭弁論にもぜひご参集下さい!
◆第8回口頭弁論 12月13日(月)午後3時~ *いずれも1号法廷
◆第9回口頭弁論 3月16日(水)午後3時~
富山訴訟第7回口頭弁論意見陳述 原告:和田美智子
原告の和田美智子です。陳述の機会をいただいたことに感謝いたします。
≪はじめに≫
私は現在、NPOの一員として、自宅から車で25分くらいの所にある富山市八尾町の中山間地で、田んぼや畑仕事をしています。富山県内の大学生や街に住む知人、そして県外からも、安全な食べ物を求める人達が来て、田植え、除草、稲刈りなどを一緒に行ってきました。
新型コロナ感染が始まってからはできませんが、夏には福島県から、低年齢の子供連れの家族の保養を受け入れてきました。一緒に野菜を収穫し、子ども達もパンをこねたり、そば打ちをしたりしました。子育ての悩みも聞きました。放射能を心配し、安全な食べ物を求める人に対して、周りの圧力が大きい、神経質になり過ぎだと言われる、など。
≪チェルノブイリ原発事故の衝撃≫
志賀原発の建設は、1986年のチェルノブイリ原発事故の後です。それまで原発にほとんど関心を持っていなかった人々も、地球全体に広がった放射性物質の被害の大きさに驚き、改めてその恐ろしさを知ることになりました。私もその一人です。10歳にもならない3人の子供の母親でした。成長期の子ども達の方が大人より放射能を取り込みやすい。子どもを守りたい。たくさんの母親たちが「原発はいらない」と声を上げ、街頭で行動を始めました。チェルノブイリ原発事故後に日本で初めて建設される志賀原発はどうしても止めたい、と必死の思いの母親たちが、全国から能登へ、そして北陸電力本店のある富山へと駆け付け、私達と一緒に志賀原発中止を訴えました。
≪能登原発防災研究会に参加して≫
一方で原発の学習会も各地で重ねられ、原発は事故だけが恐ろしいわけではなく、ウラン鉱の採掘から運搬、原発の動いている間、そして使用済み核燃料の処分など、どの段階でも大きな危険を伴うことを知りました。
アメリカでは、事故の時に原発周辺の住民が避難するのが困難だとして、建設されたけど稼働しなかった例があると聞きました。実際に志賀原発で事故が起きたら、私達はどうすればよいのか、能登原発防災研究会という名の学習会を始めました。名古屋大学アイソトープセンターの研究者で、放射線管理業務に携わっていた山本定明さんを中心に、数名の女性達をメンバーにして学習会を重ねました。事故の種類や大きさは最大限を想定し、そのうえで天気や風の流れなどいろいろな条件を考える。雪の時は最悪です。積もった雪はすぐには融けないので、ずっと放射能まみれの雪に囲まれることになるのです。28年前、市販されているもので放射線防護服を作ってみました。密封性の良い雨合羽、水中メガネ、ゴム手袋、ゴム長靴、マスク、避難用具の入ったリュックサック。すき間は全てガムテープなどでテーピングする。この防護服は、その年のアースデイのイベントで展示しました。多くの市民に原発事故の恐ろしさをアピールすることができたと思います。でも正直、その頃はこんなものを使う日が来るとは思っていませんでした。しかし、あの防護服の世界が現実になってしまいました。福島原発事故です。
≪北陸電力株主総会に参加≫
1990年に私は北陸電力の株主になり、その年の株主総会に出席しました。それから何度も株主総会で質問をしてきましたが、議長の北陸電力会長は必ず言うのです。「万が一などの仮定の質問には答えられません」と。「重大な事故にならないために、十分な安全対策がされているから、重大事故はあり得ない。」とも。でも、現実に志賀原発と同じ沸騰水型の福島原発で大事故が起こりました。
しかし、私の記憶では、これまで株主総会で私達の質問に対して「大事故は起きない」と断言していたことに対して、北陸電力の取締役の誰ひとり「間違っていました。すみません。」と誤りを認めていません。自らの誤りを認めてほしいのです。安全ではなかったのですから。
志賀原発で今後どれだけの追加工事を重ねても、核物質を人の手で管理し続けることは無理です。手を付けてはいけないものを掘り出してしまい、火をつけてしまったのです。今すべき事は、どうやって火を鎮め、穏やかに眠ってもらうかに全力を注ぐことです。
≪春の山菜採り≫
私は山菜採りを楽しみにしています。福島でも放射能で汚染された山々に、原発事故後も山菜は毎年出ていることでしょう。でも、その山に立ち入ることも、ましてその恵みをいただくこともできません。雪国に暮らす者にとって、春を待つ気持ちはひとしおです。富山では今のところ放射能汚染はほとんどありません。春に山に入るとき、「志賀原発で事故がなくて良かった。今年もここに来られた。」とほっとしています。言い換えれば、「放射能が来たらどうしよう」という不安な日々を送っているのです。
≪原発は人権を奪う≫
私は以前、不登校の子ども達が通う適応指導教室で、子ども達と学び遊び、保護者、教員、子ども本人からの相談に対応する仕事をしていました。虐待やDVの相談もありました。「人権」について学ぶ機会もありました。「人権とは、安心して、自信をもって、自由に選択できる権利」だと学びました。人権が侵害されている状態とは、この3つの権利がないこと。原発のある社会は、目に見えない放射能の不安でいっぱい。このような社会に、子ども達を自信をもって送り出せない。放射能の被害から逃れることはできない。原発のある社会は、人権を奪う社会でもあるのです。
≪豊かだった赤住の山や海≫
もう30年以上も前になりますが、志賀町赤住で志賀原発の建設工事が始まる前に、予定地周辺の山を子ども達と歩いたことがあります。秋も深まり、ドングリや色とりどりの落ち葉を子ども達と拾い、目の前の海はきれいに光っていました。地元の赤住で原発反対を訴え続けた橋たきさん、私達は「橋のばあちゃん」と呼んでいましたが、「ここの山はマツタケなどがたくさん採れ、目の前の海では魚や海藻などがたくさん採れた」と何度も話してくれました。これこそが、私たちが先祖から受け継ぎ、未来の子ども達に引き継ぐべき大事ないのち、自然だと思います。
≪裁判所にお願いすること≫
今年の北陸電力の株主総会では、私は質問を希望して挙手しましたが、議長はそれを無視して質疑を打ち切り、議案を採決して総会を終了させてしまいました。自らの誤りをいまだに認めず、株主にもきちんと説明しないまま、志賀原発の再稼働を進める北陸電力及び取締役たち。その誤りを正さないと、志賀原発でも大事故が起きて、北陸の土地が海が放射能で汚染され、子々孫々の子ども達やすべてのいのちが脅かされることになります。
裁判所におかれては、一日も早く志賀原発の運転差止めにつながる判決を出されるようお願いします。
以上 <2021年9月29日 富山地裁>
<各地のたより>
(神戸市・井上正弘)いつも現地の通信有難うございます。8月1日、大阪を出発し広島までのピースサイクルに参加しています。
(川崎市・山内直人)残暑、コロナに負けずに原発がなくなる日まで。
(金沢市・西田直智)活動の継続を力にして、連帯していきます!
(京都市・小谷英与)小さな星・地球で今なお分捕り合戦に明け暮れている人たちがのさばっているのは本当に嘆かわしいことです。菅を取り巻く自民党の面々はまさにそれらの象徴のような気がします。これまで一度だって国民・国家のことを考えていないことが、コロナ対応の無為無策ぶりで証明されました。利権・保身・栄進・・。これはもう言いたくないのですが、能力がないとしか考えられないのです。コロナ禍にあって人との対話もはばかられる今日この頃、ストレスがたまって自分でもコントロールできるか自信がありません。
また、原発が毎日放出する膨大な温排水が放射能の汚染だけでなく海水温暖化に大きな影響を与えていること、原発建設当初から漁協や漁民の反対運動の大きな理由であることを最近知りました。もう少し勉強します。
<編集後記>
●昨年8月に亡くなられた羽咋の西澤信正さんがよく注意されていたのは、「『編集後記』は短いものに!」だった。しかし、ここ数号は紙面の関係で『視点・論点』の掲載を割愛せざるをえなかった。その代りというのではないが、今号では少し長い『編集後記』になるのをお許しいただきたい。
●根っこに「首長と議会の劣化」―風力発電学習会に思う
9.12風力発電学習会での三林さんのお話は本当に良かった。すなおに「能登の里山里海を守らねば」と感じさせられた。それにつけても痛感するのは、当該地の首長と議会の「感性の劣化」である。1面トップに掲載した完成予想図をもう一度よく見てほしい。能登のなだらかな里山に突如として巨大風車が出現する。まさに「ギョギョギョ」である。
風車の直径は135㍍。金沢駅前の日航ホテルの高さと等しい。こんな巨大設備が何十基と立ち並ぶ。この異様な光景に対する驚き・違和感・反発が各首長と議員たちに殆んどないのが驚きだ。まず故郷の里山里海への、風景に対する感性が限りなく『劣化』していることこそ根っこの問題である。
里山里海の大切さが叫ばれる一方で、大半の川岸と海岸はコンクリートとテトラポットで固められてしまっている。温暖化を否定するトランプを生んだアメリカはもちろん、欧州諸国でも川岸と海岸の自然は守られている。異様なのは日本の姿である。
●原発を止める本当の力は?―愛国ではなく郷土愛だ!
9月24日夜7時半、NHK特集『まるごと珠洲市』が放映された。碌郷崎、見附島<右写真>、蛸島など海の恵みを実感させられる番組だった。若山地区の里山の恵みに支えられた珠洲焼―篠原敬さんのなつかしい姿もあった。番組の中では全く触れられなかったが、それは原発を追い出してこそであり、それまでの多くの人々の努力の結果でもある。
よく、「反対するだけでなく、原発に頼らない地域振興の対案が必要だ」と言われる。若狭の原発銀座の反原発の行動に駆けつける関西の仲間たちからも様々な提案が示されることがある。しかし、全国各地の原発を止めた経験をふりかえると、運動の形は様々でも、止めた本当の力は結局、「郷土愛の強さ」だったのではないか。それにつきると思う。
私の郷土近くの浜坂原発や久美浜原発が阻止されたのも、首長や議員たちの感性=郷土愛、郷土への誇りが大きかった。志賀原発反対運動と珠洲原発反対運動の歩みをみるにつけ、郷土愛の強さの違いを感じることしきりである。珠洲の人々の郷土に対する思いとこだわりは、強烈だった。愛国ならぬ郷土愛は決して外から持ち込めるものではない。 <タナカ記>